2016/02/12
アート/Art

サムスン美術館Leeumの魅力

ふりかえれば、いまを支えるものがある。

現在わたしたちの身の回りにある様々なものはすべて、過去に支えられている。身につける衣服も、その流行も、生活を支える電化製品の発明も、膨大な過去の業績の果てに生みだされたはずだ。人の思考や感性も、その人の過去の経験や生まれ育った環境によって決められるところが大きいだろう。

いまわたしは電化製品といったが、数多くある電化製品メーカーのなかでも、Galaxyスマートフォンなどを展開するサムスンの名前はよく知られていることだろう。しかし、そのサムスングループが美術館を運営していることをご存知だろうか。今回、サムスングループの所蔵する美術品を鑑賞できる、サムスン美術館Leeumの魅力をご紹介したい。

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 Leeumを構成する3つの建物

Photo credit: chiaki0808 via VisualHunt.com / CC BY-NC-SA

サムスン美術館Leeumはサムスン文化財団によって、2004年に韓国のソウル、漢南洞に建てられた美術館である。韓国の伝統的な美術品と世界の現代美術品を所蔵するLeeumは、そのテーマに沿って設計された独創的な3つの建物で構成されている。その設計に携わったのは、いずれも世界的に著名な建築家、マリオ・ボッタ、ジャン・ヌーヴェル、レム・コールハースの3人だ。

Photo credit: Around the World in unknown Days via Visualhunt / CC BY-NC-SA

韓国の古美術品が展示される『ミュージアム1』はマリオ・ボッタによるもの。テラコッタレンガに覆われた直方体と逆円錐形の建物は、その直線と曲線のコントラストが美しいばかりでなく、堂々とそびえたつ城を彷彿とさせる。

ジャン・ヌーヴェルによる『ミュージアム2』は錆びさせたステンレスとガラスが用いられている。最先端技術を用いた、その冷たい材質のなかで展示されるのは、現代の芸術家による作品である。絵画、彫刻、様々なメディアの作品が展示され企画展の会場となる『サムスン児童教育文化センター』はレム・コールハースによって、他の2つの建物との自然なつながりが実現されている。

こうしてみると、まるで古美術品と現代美術品が、完璧に仕分けられて別々の建物に展示されているようだが、そうではない。そして、それこそがLeeumの魅力ではないかとわたしは考えている。

時間を超え、地域をまたぐ

Photo credit: maurizio.mwg via VisualHunt / CC BY-NC-ND

たとえば、先ほど古美術品が展示されていると紹介した『ミュージアム1』にも現代美術品は展示されている。青磁の展示室では、数々の青磁とともに、金守子(キム・スージャ)の映像作品《大地の空気》が上映され、大型キャンバスを一色で塗り込めた、バイロン・キムの《高麗青磁釉薬》が展示されている。また、粉青沙器と白磁を鑑賞しながら、李秀京(イ・スキョン)の《月の裏側》を鑑賞することができる。

こうした展示環境のなかで、鑑賞者は現代の美術品が古美術に根付いていること、古美術品が新しい美術品の発想の根源になり得ることに気づかされる。過去と現在の双方に思いをめぐらせ、鑑賞者自身も美術作品に対する新しい理解を得ることができるのだ。『ミュージアム2』に進むと、現代美術が過去に根ざしている可能性を意識しながら、李禹煥(リ・ウーファン)やダミアン・ハーストなど洋の東西を超えた現代の芸術家の作品を鑑賞することができる。

非常に綿密に計画された、Leeumの展示空間で、あなたは美術に対する新たな発見をするだろう。もしくは、今までにない創意を刺激されるかもしれない。ふりかえれば、そこにあるのは、いまを支えるものだけではないのである。いまを支える過去の、その向こうに、明日のイメージを見ることができるのだ。

『サムスン美術館Leeum』気になった方はぜひ訪れてみては

Photo credit: nicing via VisualHunt.com / CC BY-NC-ND

Leeumにはタブレットタイプの日本語オーディオガイドも用意されており、展示作品すべての詳細な説明をきくことができる。韓国を訪れることがあれば、ぜひサムスン美術館Leeumにも足を運んでみてはいかがだろうか。

Leeum公式サイト

サムスン美術館Leeum

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