2016/02/20
展示会・展覧会レポート/Report

東京国立博物館で出会う117の動物たち

東京国立博物館の金属製水滴コレクション


Photo credit: osmatsuda via VisualHunt / CC BY-NC

現在、東京国立博物館にて117件の金属製水滴が一挙に展示されている。公開されている作品は全て渡邊豊太郎氏、渡邊誠之氏によって2013年に寄贈されたコレクションの一部であり、いずれも動物をモチーフとしたものである。

動物をかたどった水滴

東京国立博物館にて撮影

東京国立博物館にて撮影

水滴とは、毛筆で文字を書くときに用いる道具の一つだ。毛筆に含ませる墨液は、硯に水を入れ固形の墨をすって作る。その時に水を蓄えておく器の、小さいものを水滴という。

水滴は、筆記の際に毛筆を用いる文化においては重要な文房具であり、現存するなかで最も古いものだと考えられている水滴は、法隆寺献納宝物の金銅水滴(東京国立博物館所蔵)である。

同じ毛筆を用いる文化というと中国を思い浮かべるかもしれない。中国では、水滴は主に文机に置かれて用いられていたという。それに対し、日本では水滴を硯や筆、墨と共に硯箱に収めるという独特の活用方法が生み出された。平安時代以降、硯箱に水滴を収めるこの活用方法が主流となっていく。硯箱に収まるようにつくられた水滴は、硯箱の大きさや高さに合わせて、背の低い小型の物が多い。しかし江戸時代になると、必ずしも硯箱に収まることを意図しない、金工技術を駆使して形態に趣向を凝らした作品が現れる。水滴のモチーフには様々なものがある。茄子、瓢箪、桃などの植物、童子や布袋、仙人などの人物、そして動物たちが水滴に表されたのだ。

水滴に感じる『粋』

東京国立博物館にて撮影

東京国立博物館にて撮影

今回の展示で鑑賞することのできる117の水滴に表された動物の種類は実に様々だ。仔犬や猫といった身近な動物に始まり、馬や牛などの家畜、鳥類に魚類、鳳凰や霊亀といった神話的な動物までかたどられている。首をもたげるかたつむりや茄子の上で一休みする黄金虫なども水滴のモチーフとなり得ていることは、日本人の感性を物語っているようでもあり、非常に興味深い。愛らしく、時にユーモラスな動物たちの表現は高度な金工の技術に支えられている。粘土と蜜蝋を用いる蝋型鋳造の技術によって、鼠の毛筋や鶏のトサカの質感など精緻な表現が可能になっている。

このように、生活の一部を担う小さな道具に技巧を凝らし造形的に優れたものにしていく姿勢に、わたしは『粋』と呼ばれるような日本人の美意識を感じずにいられない。そして、動物たちの姿に作品のモチーフとなり得る特徴を見出し、自らの生活空間の中に水滴というかたちで小さな生き物を招き入れた、過去の人々に思いを馳せる。これら117の動物たちを前に、当時の日本人が抱いていた、ささやかな生命への敬意に触れることができるだろう。

 

東京国立博物館で公開されている作品リスト

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