2016/04/20
文芸/Book

都市伝説セピア ~奇妙で怖いのに、なぜか切なくひかれてしまう都市伝説集~

あなたも知ってる?都市伝説の数々

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Image via Amazon

朱川さんの描く、都市伝説を集めた作品です。都市伝説といえば、気味が悪い、怖い、世にも奇妙なストーリーが多いです。

朱川さんの描く都市伝説の中にも、「こんなはずじゃなかった」という恐怖や、「まさか、そんなことが」というような怖さがあります。それも、人間の怖さ、狂気にフォーカスしたようなところがあります。しかし、日常の中でみかけた物や人にふと思いを馳せて、そこからは、頭の中で妄想が止まらなくなってしまう。読んでいるとそんな既視感に襲われます。怖い、だけではないのです。

作者の朱川湊人さんにしか描けないであろう世界観が広がっています。気味が悪いのに、気持ちが悪いのに、どこか、人と違うものではない、どこか、日常に潜んで溶け込んでいる、そのことがまた、恐ろしい、そんな魅力があるのです。そして、読んでいるうちに、気付かないうちに、そのどこかグロテスクや狂気に満ちた登場人物にさえ、思いを馳せてしまうことがあるのです。そういった意味で、とても、面白い作品です。変に心に残るのです。

中には、切なさにぐっとフォーカスされた作品もあります。私が涙した作品は「昨日公園」です。もどかしい、はがゆい、でも、戻れないあの日、そんな感覚に胸を締め付けられます。

この小説に登場する者や場所、そして、ストーリーの中で鮮やかに展開され描かれる心の動きや感情は、自分とは関係のないようで、その実、誰もが感じたことのあるなにかしらにつながっているように思います。それが、読む人を惹き付けるのではないでしょうか。   

内容紹介

人間界に紛れ込んだフクロウの化身に出会ったら、同じ鳴き真似を返さないといけない―“都市伝説”に憑かれた男の狂気を描いたオール讀物推理小説新人賞受賞作「フクロウ男」をはじめ、親友を事故で失った少年が時間を巻き戻そうとする「昨日公園」など、人間の心の怖さ、哀しさを描いた著者のデビュー作。

-Amazon作品ページより引用

書籍情報

ジャンル:ノスタルジックホラー

著者:朱川湊人

発行日:2003/9

発行元:文藝春秋

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