2016/05/12
文芸/Book

砂の女〜ノーベル文学賞に最も近かった安部公房の作品〜

“奇才”安倍公房の描く『砂の女』

ノーベル文学賞に最も近かった男

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Image via Amazon

急死しなければ、ノーベル文学賞を受賞していただろうとされる安部公房の名作「砂の女」。

1962年に発売された、半世紀以上前の作品ですが、世界30カ国語に翻訳されており、ニューヨーク•タイムズにおいて、外国文学ベスト5に選ばれるなど、国際的な評価が非常に高い作品です。

この物語は、砂丘へ昆虫採集に出かけた主人公の男性が、村人に宿を求めて、深い砂底に埋もれかけたある家に泊まるべく、その砂底に「降りていく」ことから始まります。
その家の主である女性は、風に運ばれてきた砂が、容赦なく積もり続ける砂底の砂を掻くという奴隷のような仕事をしています。毎日毎日、砂の底で砂を掻くことで、わずかな収入を得ていて、細々と生計を立てているのです。

砂穴の底に住む女性という登場人物や、設定がとてもシュールで幻想な物語です。

安部公房作品には、一貫してこのような幻想性や不条理性が見受けられます。この物語においても、主人公はその後、村人たちの共謀により絶望的に理不尽な境遇に立たされていくのです。

この物語において、「理不尽さ」と「諦めのよさ」は物語のキーポイントとなります。希望を持たないことが、絶望から抜け出す鍵になるのかもしれません。私たちの人生も、掻いても掻いても、風に運ばれてくる砂が積もるようなものだというメッセージがくみとれます。

この作品は、半世紀以上前の作品でありながら、今なお、鋭い切り口で、私たちの心を揺さぶり続ける作品だと言えるでしょう。名作や、質の良い文学に出会いたい人におすすめの一冊です。

内容紹介

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。

-Amazon作品ページより引用

書籍情報

ジャンル: 小説

著者:安部公房

発行日:1962年

発行元:新潮社

 

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