2016/05/16
文芸/Book

GOTH(乙一)〜殺人に魅せられた少年と少女の暗い世界〜

乙一氏の描く、仄暗きミステリーの傑作

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Image via Amazon

暗黒系というジャンルに位置し、その魅力的な陰惨で暗くどこか懐かしさの覚える世界観と、だがシンプルで無駄が無い文章構成、そして徹底的なまでの描写。

それらがまるで蜘蛛の糸のように綺麗に絡み合い紡がれたこのGOTHという作品は、発表されて瞬く間に人気となりミステリー大賞を受賞する程の傑作です。

乙一という若き天才作家の中に眠る黒さを余すところなく吐き出されたこの作品は、その陰惨さから一部のカルト的マニアを生み出してしまったりもしました。

僕。という一人称の謎の少年が一応主人公なのですが、一人称や主人公は話によってコロコロ変わります。例えば「犬」や「記憶」という話なら、小説ならではの書き方で物語を描いており、ラストは結構驚かされます。

「暗黒系」というお話が一応1話になるのですけど、このGOTHというお話の中でも特に想像力豊かな人に対してキツめなお話で、これを最初に持ってくるなんて作者は面白い性格だなあとか考えてしまうくらいです。

他にもいろんな話があるのですが、特に僕。とヒロインである夜が絡み合う「記憶」というのは恋愛と呼ぶには甘くなく、でもなんと呼べば良いのか分からない。そんな絆を感じる不思議なお話です。ヒロインの夜はこの小説全体のキーパーソンであり、僕や色んな主人公達からしたらある事の対象でもある不思議で魅力的な人物です。

彼女もまた謎が多く、その謎が明かされる「記憶」というお話のラストはまた感動的でもあるので、ぜひ手に取って確かめてみてほしいです。

内容紹介

森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。

-Amazon作品ページより引用

書籍情報

ジャンル:ミステリ

著者:乙一

発行日:2005/6/25

発行元:角川書店

http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4044253048/ref=mp_s_a_1_1?

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