2017/05/09
アート/Art

東京の玄関口でアートに親しむ。東京ステーションギャラリー

東京の玄関口にある”美術館”

Photo credit: Zengame via Visualhunt.com /  CC BY

Photo credit: Zengame via Visualhunt.com / CC BY

東京駅の中に美術館があるのをご存知でしたか?

東京の玄関口として、毎日多くの観光客で賑わう東京駅。

“駅をただの通過点としてではなく、文化の発信地として活かしたい”

そんな思いから、1914年に創建された東京駅丸の内の駅舎に1988年から開設されたのが、

東京ステーションギャラリーです。

2014年に100周年を迎えた東京駅。プロジェクションマッピングや、100周年記念Suica”などのアニバーサーリーイベントはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。東京ステーションギャラリーもまた100周年に合わせ6年ほど休館していましたが、復元工事を終えた2012年から駅舎内にリニューアルオープンしました。

東京には国立、私立を合わせて100件近くの美術館・博物館がありますが、つい東京駅内に美術館がある事を知らずに上野や、六本木に行かれる方も多いのではないでしょうか。駅の片隅にひっそりとある印象ですが、実はとても高級感があり、また個性的な美術館なんです。

場所は丸の内北口ドーム内の一角

東京ステーションギャラリーは丸の内北口ドーム内の一角にあります。まっすぐ改札に向かう通勤客や、別の観光地に向かう観光客で賑わうドームの中に、ガラス張りのエントランスが。こちらが入口です。

ヴェルフリ2

中に入ると黒で統一された高級感のある受付ブースとチケット販売機があります。東京駅構内だけあって、なんとSuicaで入場券を購入できます。

チケットを係の人に渡すとエレベーターで3階まで上がるよう案内されます。入口から既にシックで落ち着いた雰囲気。展示を見る前からちょっとドキドキしてしまいます。

 

創建当時の赤レンガが残る展示空間

展示室自体は他の美術館に比べ広いとは言えませんが、駅舎内だけあって構造も普通の美術館とは違います。2階には創建当時の赤レンガが残る展示空間があり、各階を繋ぐ八角形のレンガ壁で囲まれた螺旋階段も非常に美しいです。天井にはおしゃれなシャンデリアも。こういった形で展示とは別に重要文化財としての東京駅に触れられる機会があるのは嬉しいですね。

館内の随所に創建当時の駅舎の特徴が活かされた美術館です。特に2階の重厚なレンガ壁で囲まれた展示空間は、どこか薄暗いワインセラーのような雰囲気がまた良し。

 

落ち着いた空間で展示をじっくり見たい人にオススメの美術館です。

ジャンルを縛らない個性的な展示

リニューアル前から個性的な展示内容が印象的だった東京ステーションギャラリー。前回行われた「パロディ、二重の声 – 日本の一九七〇年代前後左右 – 」展も、その珍しい内容が大きな話題を呼びましたが、過去にはこんな展示が行われています。

 

「追悼特別展 高倉健」

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201611_takakuraken.html

 

「川端康成コレクション 伝統とモダニズム」

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201602_kawabata.html

 

「パロディ、二重の声 – 日本の一九七〇年代前後左右 – 」

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201702_parody.html

 

 

絵画だけでなく写真や版画、映像、文学と、様々なジャンルの展示に挑戦している東京ステーションギャラリー。新たな文化を発信する東京の美術館の1つとして、今後の展示にも期待したいです。

 

現在はアウトサイダー・アートの展示を開催中

 

東京ステーションギャラリーで現在開催中の展示はこちら。

 

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」

ヴェルフリ1

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201704_adolfwolfli.html

 

 

アドルフ・ヴェルフリ[1864-1930]はスイスの出身の、アール・ブリュットまたはアウトサイダー・アートの世界で有名な芸術家の一人です。ちなみにヴェルフリの大回顧展が開かれるのは今回が日本初です。

 

”精神病者”の芸術

アウトサイダー・アートとは一般的に西洋の伝統的な美術教育を受けていない人、特に精神病院の患者や、子どもといった、いわゆる「未開」の人々の芸術活動のことを指す言葉です。

専門的な美術、創作活動を行う画家やアーティストのように、生きている間にその芸術活動が評価される事は少なく多くはその死後に作品が発見されました

ヴェルフリはその中でもアウトサイダー・アートが注目され始めるきっかけになったような人物で、その作品が本当に世界に知れ渡ったのは彼の死後でしたが、1920年代からアウトサイダー・アートへの評価が高まり、彼の担当医師であったウォルター・モーガンタラー博士はヴェルフリの芸術活動を元に『芸術家としての精神病患者』という論文を発表しました。

 

”狂人”の絵画

貧しい家庭に生まれ、働かない父親と病弱な母親の元で育ったヴェルフリは幾度か里子に出され、厳しい労働をさせられたり、折檻を受けるなど悲惨な幼少期を過ごしました。

11歳の時に両親を失い、窃盗で何度か捕まった後、精神病院で統合失調症と診断されます。精神科病棟に収容された数年後の35歳から新聞用紙に鉛筆で絵を描き始め、それまで病棟内で何度も暴力沙汰を起こしてきた彼は、自分の心を鎮めるために芸術活動に熱中しました。

彼が死ぬまでに残したドローイングは25,000頁。膨大な数の本の形に纏められ、彼の部屋に積み重なっていきました。

本当に彼の作品を世に広めたのは、精神病の患者や子供といった正当な美術教育を受けていない人々の作品をアール・ブリュット”(=”生”の芸術)と名付け、美術品として高く評価・収集し、その素晴らしさを世界に広めた画家、ジャン・デュビュッフェでした。

ヴェルフリの死から15年後の事でした。

Photo credit: iClassicalCom via VisualHunt /  CC BY

Photo credit: iClassicalCom via VisualHunt / CC BY

今回の展示ではヴェルフリの自叙伝的な作品『揺りかごから墓場まで』、空想の王国の建国について記した『地理と代数の書』全(2,970頁)、音楽制作に没頭した『歌と舞曲の書』、ヴェルフリが遂に未完でこの世を去った『葬送行進曲』(全8404頁)まで、彼が残した夥しい数の作品から74点を厳選、彼の制作を網羅的に鑑賞できる展示となっています。

彼の残した膨大なテキスト楽譜ドローイングからはその異常とも言える彼の描画に対するエネルギーと同時に、曼荼羅に通ずるような広がり、彼の生涯について予感させるような部分が垣間見え、展示を見ながらまるで彼の空想の中の巨大な王国宇宙に囚われてしまったような感覚に陥ります。

 

まとめ

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展はヴェルフリの作品の多くを所蔵するアドルフ・ヴェルフリ財団の協力を得て、兵庫県美術館、名古屋市美術館と巡回。東京ステーションギャラリーでの開催が最後となります。

アウトサイダー・アートアール・ブリュットが好きな方は見逃せないです。

「アウトサイダー・アート、アール・ブリュットって何?」といった方もぜひ、この機械にアウトサイダー・アートの持つ原始的、狂信的なエネルギーを体感してみてください!

 

東京ステーションギャラリー

http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

所在地:東京都千代田区丸の内1-9-1 

営業時間:10:00~18:00

入場料:展覧会によって異なる

アクセス:【電車】JR東京駅丸の内北口改札前(東京駅丸の内赤煉瓦駅舎内)

お問い合わせ:03-3212-2485

 

 

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