2017/05/26
展示会・展覧会レポート/Report

絶対見逃せない!「バベルの塔」展【24年ぶり来日】

絶対見逃せない!「バベルの塔」展【24年ぶり来日】

2017年4月18日(火)から東京都美術館で開催されている

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展

 

あなたはもう行きましたか?

 

今回「バベルの塔」が来日するのは24年ぶり。

同時にヒエロニムス・ボスの油彩が2初来日し、ブリューゲルと同時代の16世紀フランドル絵画の魅力を感じることができる展示となっています。

また、展示に合わせた様々な企画、タイアップイベントも行われています。

今回はそんな「バベルの塔」展の魅力をまとめてみました。

 

  • 「バベルの塔」が傑作と呼ばれる理由とは?

  • 「フランドル絵画」とは?

  • フランドル絵画の2大巨匠ピーテル・ブリューゲルとヒエロニムス・ボスとはどんな人物なのか?

  • 展覧会の構成と見どころは?

 

以上の構成でご紹介したいと思います。

 

「バベルの塔」は何故”傑作”と呼ばれるのか?

絵の大きさは59.9×74.6㎠

実際に展示を見た方で、実物の絵の大きさに「え、こんな小さいの?」と驚かれた方もいるかもしれませんが、実はこの絵の中に1,400人の人物が描かれていると言われています。

「本当に1,400もいるの?」と疑ってしまうほど、繊細に描かれていて、近くで見ても俄かに信じられませんが、この超繊細な描写が傑作と言われる理由の一つでもあります。

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ピーテル・ブリューゲルは本作を描く前に一度「バベルの塔」を描いていますが、こちらは本作とは少し構図が異なり、他の画家の描いてきた「バベルの塔」と少し似た印象を持ちます。

この作品でそれまでの「バベルの塔」を題材にした絵と大きく変わったのは、今まで多くの画家がバベルの塔を建設する人々を主題に置いて描いてきたのに対し、バベルの塔の建物そのものを画面の中心に大きく据え完全なパノラマ風景を描いた点です。

それ以前まで「人間の視点」から捉えられてきたバベルの塔を、ブリューゲルは「神の視点」から描いたのです。

全ての地は、同じ言葉と同じ言語を用いていた。東の方から移動した人々は、シンアル[3]の地の平原に至り、そこに住みついた。

そして、「さあ、煉瓦を作ろう。火で焼こう」と言い合った。彼らは石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを用いた。そして、言った、「さあ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届くほどの。あらゆる地に散って、消え去ることのないように、我々の為に名をあげよう」。

主は、人の子らが作ろうとしていた街と塔とを見ようとしてお下りになり、そして仰せられた、「なるほど、彼らは一つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」。

主はそこから全ての地に人を散らされたので。彼らは街づくりを取りやめた。その為に、この街はバベルと名付けられた。主がそこで、全地の言葉を乱し、そこから人を全地に散らされたからである

「創世記」11章1-9節

引用:wikipedia

 

バベルの塔の物語は、もともとは旧約聖書の「創世記」に登場します。

バベルの塔と聞いて、多くの人が「人類が塔をつくり神に挑戦しようとしたので、神は塔を崩した」という物語を想像しますが、実際の旧約聖書の中にバベルの塔の「崩壊」についての記述はありません。

上の引用にもある通り、神は塔を崩壊したのではなく、一つの共有言語を持っていた人間たちから言語を奪い、その言語も住んでいた場所もバラバラに分断した、というのが正しい解釈です。

 

人視点で描かれたバベルの塔は塔の崩壊を予知し、後に訪れる悲劇に警鐘を鳴らすものであるとするならば、

神視点で描かれた本作は、一つであった人間が言語を分断されるという後の混乱、世界の混沌を予知し、さらにはそれを行った神の意図についても私たちに問いかけているような気がします。

 

本物をぜひ見て欲しいのですが、この絵の中にブリューゲルは当時の最新の建築技術、また市民の生活などを実に繊細に描写しています。

部分と全体の作用によってこの絵の中にある世界が、現実の世界のように現在も我々の前に迫ってくるのはその為では無いでしょうか。

 

「フランドル絵画」とは?

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「フランドル美術」とは現在のベルギーを中心としたネーデルラント、フランドル地方で生まれた美術、絵画のことを指します。

イタリアで花開いたルネサンスがアルプスを越え、西洋諸国(ドイツ、ネーデルランド、フランス)に広まったことで「北方ルネサンス」とも呼ばれるようになりました。

14〜15世紀に活躍した画家、ヤン・ファン・アイクや「快楽の園」といった、一見奇妙で不気味な絵を多く残したヒエロニムス・ボス

16世紀にはピーテル・ブリューゲル農家の生活を主題とした作品を多く制作し、北方的な伝統としての美術を発展させました。

それまでのテンペラの絵画技法はをメディウム(固着剤)に用いるのが一般的でしたが、そこに油彩を組み合わせ、大きな技術革新を起こしていったのがこの時代です。

卵メディウムの場合、感想が早く、塗り重ねが難しいのに対して、油彩の場合、乾きが遅いので逆に塗り重ねを幾度も行えるようになり、繊細な描写が可能になりました。

 

フランドル絵画の2大巨匠ピーテル・ブリューゲルとヒエロニムス・ボスとはどんな人物なのか?

ピーテル・ブリューゲル(1525年-1530年頃 – 1569年)

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ピーテル・ブリューゲルの生没年、また初期の詳細な生い立ちについて、まだ全てを証明するものが見つかっていません。

生没年はおおよそ1525年〜1530年頃。出生地については諸説あります。

最初の記録として残っているのは現在のベルギーにあるアントウェルペンの画家組合(ギルド)に所属していたという記録。当時21〜26歳であったと推測されています。

神聖ローマ皇帝カール5世に仕えた宮廷画家ピーテル・クックに画業を習い、1551〜1554年の間、イタリアを旅してその風景を絵に残しました。

この頃同時に版画業者ヒエロニムス・コックと働くようになり、当時流行していたヒエロニムス・ボス風の奇怪な幻想絵画を多く手がけています。

1563年ブリューゲルはマリア・クックと結婚。ブリュッセルに移り住みました。

ですが1567年スペイン王フェリペ2世から派遣された第3代アルバ公フェルナンド・アルバレス・デ・トレドがブリュッセルに入市し、プロテスタント(新教徒)に対する激しい弾圧を行います。ブリューゲルはこの事態を見て、死ぬ直前には妻に「余りに直截的・風刺的な」素描を焼き捨てさせ、1569年に30代末-40代前半で没しました。

 

ヒエロニムス・ボス(1450年頃 – 1516年)

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1450年頃ベルギー国境近くで生まれた。彼の家族は多くが画家業を営む画家一族でした。

画名の由来はス・ヘルト・ヘンボス(デン・ボス)で生まれ、生涯の多くの時間をここで過ごした事にちなんでいます。

ヨーロッパ各地の王侯貴族たちから制作を依頼され、スペインのフェリペ2世には特に気に入られていたようで、現在もスペインのプラド美術館には「快楽の園」(1480年 – 1500年頃)をはじめとする彼の多くの傑作が所蔵されています。

彼の作品は16世紀の宗教改革運動により、作品の多くが紛失してしまい、現在はわずか30点ほど。

16世紀にはヒエロニムス・ボス風の絵画が大流行したため、後世の模作や版画が多く出回っていますが、真贋の判別が困難な物もあります。

シュルレアリスムにも共通するような幻想的で奇妙な作風は他のフランドル絵画とは一線を画しており、ブリューゲルをはじめとする北方ルネサンスの画家たちに大きな影響を与えています。

 

展覧会の構成と見どころは?

続いて、展示の構成について詳しくご紹介します。

B1Fが主にネーデルラント美術、フランドル絵画の展示。フロア構成は以下のようになっています。

 

  • 「16世紀ネーデルラントの彫刻」

  • 「信仰に仕えて」

  • 「ホラント地方の美術」

  • 「新たな画題へ」

 

ベルギー、オランダといったネーデルラント地方で花開いた北方ルネサンスの代表的な作家の作品を見ることができます。

イタリアに影響を受けた宗教的主題の作品だけでなく、風俗的な主題の作品も多いフランドル絵画

写実性にこだわらず、理想的に描いた人物像なども見所の一つです。

 

1Fがヒエロニムス・ボスの作品を中心とした展示となっており、構成は以下の通り。

 

  • 「奇想の画家ヒエロニムス・ボス」

  • 「ボスのように描く」

  • 「ブリューゲルの版画」

 

絵から読み解く宗教的暗示

今回初来日している、ボスの作品2点について、作品に登場する暗示的なモチーフを中心に、詳しくご紹介します。

まずはこちらの作品。

 

「放浪者」

  • 【放浪者の背負う物】
  • 猫の皮、スプーン、靴職人の機具。中央に描かれている旅人が背負っているこれらの物は、彼が特定の職についていないということを示しています。
  • また、身なりの貧相さからも彼が貧しい放浪者であることが伺えます。
  • 【娼館】
  • 画面の左手奥にある建物の屋根には、棒に刺さった花瓶、鳩小屋、白鳥の看板がありますが、それらはこの建物が「娼館」であることを暗示しています。

 

この放浪者は娼館を出てきたところなのでしょうか、表情は暗く、悲嘆に暮れている心境が伺えます。

「旅の途中ではあらゆる誘惑の前に選択を迫られている」という、人生に於ける大きな課題を突きつけられるような作品です。

 

「聖クリストフォオロス」

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  • 【聖クリストフォロスの物語】
  • 聖クリストフォオロスは、もとはレプロブスという名前のローマ人だったそうです。
  • キリスト教に改宗した彼は、隠者のもとを訪れ、イエス・キリストにより親しく仕える方法を尋ねます。
  • 隠者は人々に奉仕することがその道であるといい、流れの急な川を示して、そこで川を渡る人々を助けることを提案しました。
  • レプロブスはこれを聞き入れ、川を渡ろうとする人々に無償で尽くし始めたのです。
  • ある日、小さな男の子が川を渡りたいとレプロブスに言いました。彼があまりに小さかったのでお安い御用と引き受けますが、川を渡るうちに男の子は異様な重さになり、レプロブスは倒れそうになります。あまりの重さに男の子がただものでないことに気づいたレプロブスは丁重にその名前をたずねたところ、男の子は自分がイエス・キリストであると明かします。
  • イエスは全世界の人々の罪を背負っているため重かったのです。川を渡りきったところでイエスはレプロブスを祝福し、今後は「キリストを背負ったもの」という意味の「クリストフォロス」と名乗るよう命じました。

 

そんな物語を絵にしたこの作品ですが、まさに川を渡り切ろうとする彼の周りの風景には、様々な怪しい者たちが潜んでいます。

 

  • 【花瓶】
  • ボスの作品にしばしば登場することの多い花瓶。
  • ここではハシゴがかけられ、中にいる小人がランタンを吊るしています。
  • 漁師に殺された熊
  • 聖クリストフォオロスの背後には木に吊される熊の姿が。
  • 不吉の標でもある「熊」を殺すことで悪を打ち破ったことを暗示しています。
  • 【モンスター】
  • 画面左奥から顔を出すモンスター、裸で走る人間など、異形の者たちの姿がちらほら。
  • 危険が依然として続いているという暗示なのでしょうか。

 

ブリューゲルの版画

16世紀、ヒエロニムス・ボス風の奇怪な幻想絵画が流行した際に、ブリューゲルもまた、ボス風の版画を制作しており、その作品が本展でも見られます。

一見本物のボス作品と見紛うレベル。画家組合(ギルド)によって画家業が活発に営まれていた時代。

当時の多くの画家たち、そしてブリューゲルもこうした仕事を通して自分の腕を磨いていったのではないかと思います。

 

 

2Fがついに「バベルの塔」の展示室になります。

絵の前は常に人だかりができていますので、双眼鏡などのご準備をおすすめします。

フロアには映像シアターもあり、「バベルの塔」に関する約7分間の資料映像を見ることができます。

 

まとめ

東京都美術館で現在開催中の「バベルの塔」展

「バベルの塔」の24年ぶりの来日と、ボス作品の初来日もあって、美術館は連日混雑しているようですので、事前に混雑情報をチェックしてから行かれることをお勧めします。

 

混雑情報はこちらの専用twitterアカウントからリアルタイムの情報がチェックできます。

 

 

せっかく見るならゆっくり見たいですし、今回の作品のラインナップではなおさらではないかと思います。

展示について色々ご紹介してきましたが、やはり絵は本物を見ないとわかりません。

皆さんも東京都美術館で是非本物の良さを見て感じてきてください。

 

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展

展示公式サイトhttp://babel2017.jp

東京都美術館http://www.tobikan.jp

所在地:〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36

アクセス:JR上野駅「公園口」より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分、京成線京成上野駅より徒歩10

開館時間:9:30~17:30

休館日:毎月第1、第3月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)*特別展・企画展:毎週月曜日休室(祝日・振替休日の場合は翌日)

当日券:一般 1,600円 / 大学生・専門学校生1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000

 

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