2017/05/31
アート/Art

【展覧会レビュー】豊田市美術館「東山魁夷 唐招堤寺御影堂障壁画」展

【展覧会レビュー】豊田市美術館「東山魁夷 唐招堤寺御影堂障壁画」展

 

IMG_2771

誰もが一度は聞いたことのある日本画の巨匠東山魁夷

4月2日まで茨城県立近代美術館で展示されていた

東山魁夷 唐招堤寺御影堂障壁画 展

が、4月22日から愛知県の豊田市美術館に巡回し、絶賛開催中です。

 

制作に10年を費やした大作 唐招堤寺御影堂障壁画

今回の展示は、東山魁夷が制作依頼を受けてから完成までに約10年の画家人生を費やしたという「唐招堤寺御影堂障壁画」の公開がメインとなっています。

東山魁夷の記念碑的大作とも言えるこの障壁画、東海地方では初公開

ということで連日多くの人で賑わっており、土日の朝は長蛇の列ができています。

 

そもそも、「唐招提寺 御影堂」とは?

唐招堤寺は南都六宗の一つである律宗の総本山

日本の仏教に正しい戒律を伝えるため、回にのぼる渡海の失敗と様々な苦境に立たされながらついには両の眼を失明し、やっとの思いで来日した鑑真和上

来日後5年を東寺で過ごされた鑑真和上が、戒律を学ぶ者のための道場として現在の奈良市五条町に開基したのがこの唐招提寺です。

唐招堤寺の境内の北側にあるのがこの御影堂

昭和39(1964年)に興福寺の別当坊であった建物を移築し、現在は鑑真和上坐像が奉安されています。

 

年に3日間しか一般公開されない障壁画を近くで見る最大のチャンス

実は、この御影堂は毎年日の開山忌の際、前後合わせて3日間しか公開されません

しかも平成27年から始まった平成大修理のため、今後5年は拝観が叶わないのです。

本展覧会は、この通常一般に公開されていない障壁画の全68面を、一堂に、しかも間近で鑑賞できる絶好の機会なのです。

 

画家人生10年をかけた壮絶な制作過程

東山魁夷はこの障壁画制作の依頼を受けてから、制作を始めるにあたって中国と日本を何度も行き来し、鑑真和上が歩いたとされる中国の各地をスケッチしました。

そこで彼が一貫して決めていたテーマは

 

「中国風景のスケッチを水墨で描くこと」

 

また、東山魁夷は中国の風景についての印象を

 

「水墨でなければ表現し難い」

 

と語っています。

 

中国の地を描くからには墨を用いてスケッチをしよう。

そう決めた彼は画家人生を全てこの制作にかけるつもりでスケッチをとり、幾度も構成を練りました。

 

全68面からなる障壁画。それぞれのテーマ・構成のポイントは?

障壁画の制作は大きく二期に分かれており、

第一期は昭和50年に奉納された《山雲》《濤声》

この二つの障壁画は彩色画日本の自然の風景を描いています。

《山雲》昭和50年奉納 唐招提寺御影堂蔵

main_2

出典

《濤声》昭和50年奉納 唐招提寺御影堂蔵

第二期は昭和55年に奉納された《揚州薫風》《桂林月宵》《黄山暁雲》

こちらの三作で東山魁夷は、中国の風景を水墨で表現し、画家の新境地とも言える大作に挑んでいます

《揚州薫風》昭和55年奉納 唐招提寺御影堂蔵


《桂林月宵》昭和55年奉納 唐招提寺御影堂蔵


《黄山暁雲》昭和55年奉納 唐招提寺御影堂蔵

また、本画制作に到るまでの周到な構成の下図や、画家が中国各地に赴き水墨で描いたスケッチも公開。

本画も素晴らしいですが、水墨画のスケッチからは画家の制作に対する熱い想いや、かつて同じ土地を歩いたであろう鑑真和上に対する想いも伝わってきます。

 

障壁画とは別に、鑑真和上坐像の厨子絵《瑞光》の下絵も展示されています。

こちらは彩色絵で、夜空に浮かぶ月、瑠璃色の夜空と海が一体となった美しい風景が描かれており、鑑真和上を奉るにふさわしい作品となっています。

 

気になる展示風景

今回の展示は障壁画がメインということで、その展示方法も少し変わっています。

なんと、広い展示室の中に和室が並んでいるのです。

普段はガラスで覆われていることの多い日本画ですが、今回はガラス無し

作品保護の為、照明はかなり落とされていますが、それでも近くに寄って細かい作品のディテールを鑑賞することが可能です。

と言っても東山魁夷の作品はやはりその全体像、構図、大きく伸びやかに描かれた日本古来の風景にあるような気がします。

作品を眺めていると、まるで本当にその土地の風が吹いているようにも感じてしまうような大作ばかりです。

 

東山魁夷の画家人生10年をかけた大作が観れらる本展覧会は豊田市美術館で6月11日まで開催。

東京への巡回情報は今の所無いので、御影堂の修復が完了する5年後までに見るチャンスがあるかどうか心配な所です、、!!

通常でも年に3回しか見られない、そんな貴重な作品を見られるこの機会を是非逃さないように、皆さんもチェックしてみてくださいね。

 

「東山魁夷 唐招堤寺御影堂障壁画」展

開催期間 2017年4月22日[土]-6月11日[日]

開館時間 午前10時-午後5時30分[入場は午後5時まで]

休館日 月曜日[5月1日は開館]

観覧料  一般 1,400円[1,200円]、高校・大学生 1,200円[1,000円]、中学生以下 無料

*[]内は20名以上の団体料金/障がい者手帳をお持ちの方(介添え1名)

*豊田市内在住又は在学の高校生及び豊田市内在住の75歳以上は無料[要証明]

豊田市美術館HP http://www.museum.toyota.aichi.jp/

所在地 〒471-0034 愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1

お問い合わせ 0565-34-6610

アクセス 名古屋駅から>地下鉄東山線伏見駅乗り換え、地下鉄鶴舞線豊田市行き終点下車

関連記事

世界一の現代美術館、岡山出身の現代アートコレクター石川康治が構想

世界一の現代美術館?? 聞いたことありますか?ないですよね。現代美術館といえば、日本だと東京国立近代美術館、埼玉県立近代美術館、神奈川県立近代美術館、金沢21世紀近代美術館あたりが有名ですね。 世界でいうと、やはりニュー

あなたは気をつけていますか?ネットでアートを売る際の「写真」の見せ方

アートをオンラインで販売する、そんな時代 Photo via Visual hunt 様々なものをオンラインで購入できるこの時代。多くの方はAmazonや楽天市場で商品を買った経験があるかと思います。そんな時皆さんが購入を決断する

アートホテル『bna koenji』を東京高円寺に!このクラウドファンディング、絶対成功してほしい。

サブカルの街、高円寺 Photo credit: Graffiti Land via VisualHunt.com / CC BY-NC 『高円寺』と聞くと、ちょっと個性的なサブカル好きの方が闊歩する......そんなイメージを持つ方も

理由はおしゃれだから、だけではない!美大生がMacを好む訳

美大生=Mac使い、という印象は間違いじゃなかった? 美大生の作業って大体Macです。もちろんWINDOWS派も居ないことは無いと思うんですがそれでもMac派が多いんですよね……一体何故なんでしょうか。 下記の数点からその理由を説明した

はらぺこあおむしと絵本の魔術師エリックカール

はらぺこあおむしという絵本をご存知ですか?   原題は『The Very Hungry Caterpillar』で、アメリカの絵本作家エリックカールが1969年に出版した絵本です。 あらすじ 日曜日の朝、卵からかえった