2018/02/12
アート/Art

0から学ぶ西洋美術史 ~初期イタリア・ルネサンス編~

 ルネサンス 美術

 

ルネサンスとは、

復活・再生を意味するフランス語です。

 

それまでの教会中心の文化から、

人間の存在を一番に尊重していた、ギリシア・ローマの古代の文化を見直し、

復興しようとする運動のことを指します。

 

ルネサンスは14世紀のイタリアから始まり、西欧各地に広まりました。

 

歴史では、14世紀には文学においてルネサンスがなされていました。

 

現実に生きる人間に目を向けたダンテや、ペトラルカボッカチオは、

古代ローマの作品を発掘しつつ、自身の作品に生かしました。

 

芸術分野では、古代ローマに残されていた石棺リレーフをヒントに、

古代の造形が彫刻作品において復活し、

 

絵画ではダンテの友達のジョットが、それまで平面的な人間像に、重み量感を与えました。

 

こうして、人間をよく観察した美術が14世紀に復活し始めますが、

 

世紀半ばで大流行したペストによって、この展開は一時中断されます。

 

しかし、15世紀初めに息を吹き返し、文学同様、古代の文明を積極的に取り入れていくようになりました。

 

この時期を16世紀の盛期ルネサンスと区別して、初期ルネサンスといいます。

 

この時代は骨格筋肉を考慮した人間味のある人体や、

幾何学的遠近法の発見などの大きな革命が行われた時代でもあります。

 

また、世紀前半の宗教画支持から、

後半には神学が古代の哲学と融合するに及んで、

神話画が主流になります。

 

これには、画家(ときには詩人や学者等)を、自邸宅の宮廷画家として抱え支援する、

世俗の裕福な市民や君公からなるパトロンの存在が大きかったと言えるでしょう。

 

一般的に、ルネッサンスというと16世紀の盛期ルネッサンスをさすことが多いですが、

今回はこの15世紀初頭の初期ルネッサンスについて解説します。

 

中世から初期ルネサンス ジョット~マザッチョの時代

ジョット 美術

ジョット・ディ・ボンドーネ Giotto di Bondone
(1267年頃-1337年1月8日)
中世後期のイタリア人画家、建築家。

 

 

西洋中世において、美術は教会の壁画祭壇画に代表されるように、

そのほとんどが神に奉仕するためのものでした。

 

14世紀のイタリアでは、その中に少しずつ人間のリアルが求められるようになります。

 

ここでジョット「キリストの逮捕(ユダの裏切り)」を見てみましょう。

 

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出典

裏切り者のユダが、キリストに挨拶の接吻をするのを合図に、

左右から人々と列が流れ込む様子を描いた作品です。

 

左側には怒りに駆られた聖ペテロが大司祭の耳をナイフで切り落とそうとする様子が描かれています。

 

この14世紀初頭に北イタリアで制作されたこの壁画は、

中世絵画の役割だった聖書の解説としてだけでなく、緊張感のある宗教ドラマにもなっています。

 

同じくジョット「神殿から追われるヨアキム」を見てみましょう。

 

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聖母マリアを授かる前、ヨアキムと妻アンナは長らく子供に恵まれませんでした。

 

そこで、神殿に願いを捧げようとしますが、逆に子供がいないことで拒否される場面です。

 

聖母マリア伝説の最初のエピソードです。

 

奥行きのある空間と、質量のある人間が描かれています。

 

抽象的な神の世界から、現実を生きる人間への視点の移動は、

 

その後、詩聖ダンテの文学における革新や、

その親友のジョットの絵画的革新へとつながっていきます。

 

そして、ジョットの革新は1世紀後、

同じフィレンツェの画家マザッチョに受け継がれます。

 

マザッチョ 美術

マザッチオ Masaccio

(1401年12月21日 – 1428年)

ルネサンス初期のイタリア人画家。

 

 

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出典

 

マザッチョ「聖ヒエロニムスと洗礼者ヨハネ」は背景こそ中世的ですが、

 

聖人の厳しい相貌には精神性を重視した新しい写実主義がみてとれます。

 

 

また、ジョットは絵画の歩みに、もう一つ大きな貢献をしています。

 

それは「聖三位一体」に使われている遠近法です。

 

遠近法とは、例えば

 

鉄道の二本のレールが遠くへ行くに従って、一つに交わるようにみえる。

 

といった自覚的原理を応用したもので、これを使うことで平面に奥行きが生まれます。

 

彼はそれを絵画に応用することに成功しました。

 

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「聖三位一体」

 

聖三位一体」の目の前に立つと、

巨大な礼拝堂がそびえ立ち、奥から父なる神とキリストがこちらに向かってくるような錯覚を誰でも感じ取れるでしょう。

 

もう一つ大切なことは、キリスト像が以前の様式化された看板のような表現ではなく、

現実的な重みをもった堂々たる人体として表現されているところです。

 

それまで超越的・観念的であった神の世界を表すために、

私たちと同じ現実に生きている人間と同じ肉体としてのリアリティを追求することで、

より宗教的な説得力を念頭に置いているのがわかります。

 

その意味で、この作品はルネサンス美術における人間重視の性格を宣言しているといえるのです。

 

国際ゴシック

ルネサンス タピスリー

 

一方、北方諸国では自然主義

すなわち植物や鳥や動物をありのままに、しかも美しく表現することに目覚めつつありました。

 

世紀後半にはタピスリーのような、装飾性が強く洗練された、

国際ゴシックと呼ばれる芸術へと展開していきます。

 

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出典

 

国際ゴシックの代表的画家である、ランブール兄弟

「ベリー公いとも豪華なる時禱書」では、着飾った宮廷の人々が主人公になっています。

 

優雅な人物表現や子供の表現に見られる柔らかい線の動き

金とラピスラズリによる色彩の調和など、

国際ゴシックの貴族趣味的な雰囲気がよく表れています。

 

国際ゴシック宮廷的優美さ、幻想性などが人気を博して、イタリアでも北部で芸術家たちを中心に展開され、15世紀絵画の底流を形作りました。

ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ作「東方3博士の礼拝」はお伽話の一場面であるように。また、彼の協力者であったピサネロの「ジネブラ・デステの肖像」では、ジネブラの背景に描かれる美しい植物や蝶が幻想的に描き出され、タピスリーの効果を上げています。

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「ジネブラ・デステの肖像」

 

国際ゴシック自然主義では、写真のような正確な描写より、装飾性を重視そのおかげで甘い夢のような叙情性が生み出されるのです。

 

 

 

 

 

変遷

15世紀初めマザッチョ人体や空間に現実性を盛り込んだ新しい芸術を見出しますが、それでもまだ宮廷趣味的な優雅な国際ゴシック様式は優勢でした。

絵画に新しい空間表現である遠近法が導入されると、この分野につきっきりで研究する者たちが現れます。中でも、夜も寝ずに遠近法の研究を続けたといわれるパオロ・ウォッチェロ。代表作「サン・ロマーノの戦い」は、折れた槍や兵士が遠近法に従ってきちんと並べられています

 

 

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「サン・ロマーノの戦い」

 

 

 

ウォッチェロに並んで遠近法の画家として有名な、ピエロ・デラ・フランチェスカ。その「受胎告知」はアンジェリコフラフィリッポ・リッピの同主題の作品と比べたらよくお分りいただけるでしょう。彼の作品は人物ではなく、背景の建物中心に描かれており、実に静かな世界観を表しています。

 

 

Polyptique de Saint Antoine, peint en 1468, par Piero della Francesca,  Au centre : Vierge El'enfant,  A ses cotés : Saint Antoine de Padoue, Saint Jean-Baptiste, Francis et Elisabeth de Hongrie En haut : l'Annonciation Galerie nationale de l'Ombrie EPérouse (Perugia) installée dans le Palazzo dei Priori.

ピエロ・デラ・フランチェスカ

 

 

 

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フラ・アンジェリコ

 

 

 

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フラ・フィリッポ・リッピ

 

特にピエロは、国際ゴシック様式とは違い、明暗をやわらかく、しかもらくっきりと際立たせているので、作品に独自の清潔感、あるいは無垢な感じが生まれています。

 

 

 

 

フィレンツェ、メディチ家の台頭とボッティチェリ

 

ここまでの15世紀〜半ばイタリア絵画では、人物がかなり詳しく描かれていたことがわかります。
ですが、建築・彫刻のように、古代の遺品や遺構を参考にした作品はあまりありませんでした。つまり、絵画においてルネサンスを意味する「古代の再生」はまだ訪れていませんでした。
しかし、15世紀も後半になるとようやくルネサンスを確認できるようになります。その幕上げの一人が、フィレンツェの政治的凋落の運命と共にした画家ボッツィチェリです。

 

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ボッティチェリ作「ヴィーナスの誕生

 

 

代表作の一つ、神話の神々が登場する」の中で、西風ゼフュロスに追いつかれる大地のニンフクラリスほのかな恥じらいを感じさせる軽やかさを感じます。古代彫刻が持っていた人間の内面を人体で語るという伝統を、彼は神話画にも応用しました。

 

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さらに、「受胎告知」では、大天使ガブリエルに告知された聖母マリア動揺が彼女の激しい動きに反映しています。フラ・アンジェリコフラ・フィリッポ・リッピらの[受胎告知]に、このような精神性を表した表現があったでしょうか。

 

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ボッティチェリ

 

 

 

 

 

パトロンと画家の新しい役割

古代芸術の吸収とならび、この時期に絵画史の上で無視できないのがパトロンの存在です。パトロンとは芸術家の仕事を支え、作品を収集いるいは寄進しながら、芸術そのものを保護、育成する団体や個人のことです。団体だと協会や都市がそれになり、個人だと裕福な商人、君主、国王があたります。
ボッティチェリパトロンは、芸術だけでなく、学者や詩人らを庇護し、イタリアのルネサンスを開花に社会的、経済的に大きく貢献したメディチ家でした。
このパトロンと画家との関係は、イタリア北部にも広がります。
こうして、画家は宗教画以外に、宮廷画家としてパトロンなど世俗の裕福な人々を美しくイメージして描くという新しい役割が生まれました。

 

 

 

 

初期ルネサンスまとめ

このように、フィレンツェから始まったルネサンスの動きはゆっくりではありましたが、イタリア各地に広がっていきます。初期ルネサンスは、人間味のあふれた優しいまなざしのどかで美しい自然といった今後の盛期ルネサンスが生まれる土台を作りました。

次回は、西洋美術史のスーパースター!レオナルドダヴィンチ・ラファエロ・ミケランジェロが活躍した盛期ルネサンスについて解きたいと思います。

 

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