2018/03/20
アート/Art

0から学ぶ西洋美術史 〜ロココ美術編〜

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イアサント・リゴー作「ルイ14世の肖像」

 

ルイ14世が支配する17世紀のフランスは西欧の中心的国家でした。

しかし、1715年に彼が他界すると絶対王政にも陰りが見え、フランスでは貴族の勢力が台頭するようになります。

貴族の台頭と共に発展したのがロココ美術です。

 

ロココ美術

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ロココとはを意味する、ロカイユ(rocaille)に由来する言葉で、

もともとはバロック時代にすでに登場していた貝殻や石などを連想させる、曲線的なロカイユ装飾に由来する呼称です。

古典様式が重視されていたルイ14世時代の装飾様式が退廃的であるとして、当初は蔑称的に使われた呼び名でしたが、その後、一般の美術・文化の傾向を指す用語として、広く使われるようになります。

 

それまでの古典的な表現とは対照的に、自由さや、優雅さを追求した表現方法と言えるでしょう。

従って、ロココ絵画には装飾的、古典的なも表現は無く、軽やかで官能的な表現に比重が置かれます。

 

ロココ美術の本質を見出している作品、

それはジャン=アントワーヌ・ヴァトーの「シテール島への巡礼」です。

 

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ジャン=アントワーヌ・ヴァトー作「シテール島への巡礼」

 

愛のヴィーナスの島シテールへと巡礼した男女が、それぞれの良き伴侶を見つけるという場面で、
中央の丘には美しい装飾に身を包んだ三組のカップルがそれぞれに愛を語り合っています。

 

右手の木々の間からはヴィーナスの彫像が彼らを見守っています。

 

人生の苦悩や敬虔な宗教世界とは無縁の優美な愛の世界。

 

美しい田園風景の中で、貴族の男女が愛を語るこのような作品、「雅宴画(がえんが)」がこの時代大流行します。

 

ロココ絵画の寵児であったヴァトーは、ヴェネツィア派やルーベンスの芸術を見事に消化し、それを時代に合わせて華麗に、しかも甘美な作品に仕上げました。

 

と同時に、砂糖菓子のように今にも壊れてしまいそうなはかなさも、彼が人気になった理由の一つでした。

 

しかし、この感傷的な表現も次世代の画家ブーシェには引き継がれませんでした。

彼が作品に求めたのは、ひたすら愛らしく官能的であるということだったのです。

 

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ブーシェ作「ポンパドゥール侯爵夫人」

 

ルイ15世の愛人で、芸術の庇護者としても有名なポンパドゥール夫人を描いた作品です。

 

夫人はとても写実的に描かれていますが、
この作品から夫人の人となり、人間味を感じ取ることは難しいです。

 

一方、時代は戻り、17世紀バロック時代スペインで活躍した画家ベラスケスの「王妃マリアーナ・デ・アウストリア」の肖像画はどうでしょうか。 

 

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ベラスケス作「王妃マリアーナ・デ・アウストリア」

 

豪華な衣装や厚手のカーテンといった当時の宮廷の荘厳な雰囲気の中に、モデルとなったマリアーナのどこかあどけない表情が浮かび上がっています。

 

少し当惑したような表情には、伯父にあたるフェリペ4世の嫁になる不安が反映しているかのようです。

 

人間の真実を鋭く追求することを恐れない、ベラスケスがいかに優れた画家であったかを理解できる作品です。

 

理想化された美しい肖像画は、たしかに鑑賞者を甘い雰囲気で酔わせてくれることもあります。

 

しかし、モデルの内面に迫ることのない表面的な作品に、芸術的感動を期待するのは難しく、

それがロココ美術の限界ともいえるものでした。

 

ヴェネツィア

 

18世紀は大旅行時代でもあり、はるばる北方から多くの観光客がイタリアを訪れました。その目的の一つがヴェネツィアでした。

 

ヴェネツィア派というと、やはりティティアーノのやや重厚で美しい色彩で描かれた絵画が思い浮かびます。

 

しかし、18世紀・ヴェネツィアを代表する画家ティエポロは、光に満ち溢れた軽やかで明るい画面を生み出しました。

 

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「花嫁を運ぶアポロン」

 

アポロン一行が宮殿の上の明るい空に、今現れたばかりといった晴れやかさを表現しており、明るい光や全体の軽やかな印象には、如何にもロココ的な装飾性表面的な華麗さが見えてきます。

しかし彼はこれを売りにしており、その人気は確かなものでした。

 

イギリス

 

イギリスにはシェークスピアをはじめとする豊かな文学の伝統があり、1726年にはスフィフトの「ガリヴァー旅行記」も出版されます。

 

しかし、美術史においてはまだ頭角を現しておらず、外国から芸術家を招致するにとどまっていました。

そして18世紀に入り、ようやく自国の芸術への機運が高まります。

 

その起動力となったのが風俗画家ホガースでした。

そこに含まれる教訓や風刺は、やや毒気のあるイギリス人の心を十分に捉え、絵画市場に活気が宿すと、彼は1768年にロイヤル・アカデミーを設立するまでにイギリスの美術を引っ張りあげます。

 

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ホーガス作「描き尽くされた熱狂」

 

カトリックやユダヤ教などに入り上げた人々の姿が風刺的に捉えられており、右上には人形をもって熱烈に信仰を説く説教僧と、それを聞く人々が狂気じみた世界の中に表されています。

 

風刺や狂気というと、ボッスブリューゲルが想像されますが、彼ら以上にホガースは、あからさまな毒気が含まれています。

 

それは風刺画という、「誰にでもすぐ理解できる絵でなくてはいけない」という理由によるものでした。

 

風刺画は、18世紀、各国が感覚的な喜びを絵画に求める中、啓蒙主義思想による合理主義的な考え方や、批判的精神を育んでいたイギリスだからこそ、発展した分野の絵画でもありました。

 

まとめ

豪壮・華麗なバロックに対して、優美・繊細なロココともいわれますが、両者の境界は必ずしも明確ではなく、ロココはバロックの一種と考える人もいます。

 

また、19世紀に入ると雑誌と新聞の時代に入り、活躍の場を変えて再び風刺画が頂点に達します。

この時代は、これまで見てきた18世紀のロココ時代とははっきりと異なり、巨大でとらえがたい、大衆時代と呼ばれる時代の始まりでもあります。

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