ラファエル前派
Pre-Raphaelite Brotherhood
ラファエル前派兄弟団は、19世紀の中盤から後半にかけてイギリスで活躍した美術家や評論家のグループです。19世紀イギリスにおいては、印象派よりも勢いのあったグループかもしれません。そのはじまりは1848年、ロイヤル・アカデミーの美術学校に通っていたダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイが、ルネサンスの巨匠、ラファエロ・サンティまでの芸術こそ重きを置くべきであり、それ以降の美術教育に異を唱える意味もありました。というのも、19世紀のイギリス・アカデミーでは古典重視で、規範に沿った絵が求められたからです。その後、様々なメンバーが入れ替わり立ち替わりし、今知られるラファエル前派を作りました。ところで「兄弟団」というのは日本語ですが、元々は宗教的な結社を表します。日本で○○派といいますが、それよしもずっと強い絆を意味する言葉です。実際彼らは自分たちの絵画に Pre-Raphaelite Brotherhood の頭文字からなる「P.R.B.」という文字を記していますが、これは彼らの結社的な結びつきを表します。ラファエル前派は、主題として、中世以前の文学や伝説をモチーフにしていること、キリスト教絵画においても自ら生み出した独特の図象などをもちいていることが特徴です。いずれも「自然」がキーワードで、人の自然な姿、野の自然な姿を観察し、忠実に取り込むことを目指していました。この考えに影響を与えたのは、同時代の思想家であり美術批評家であったジョン・ラスキンです。彼は、、神の創造物である自然には完全さがある、という信仰がありました。