遠近法
perspective
遠近法とは、3次元の空間と立体を、絵画などの2次元平面上で視覚的に表現する方法です。「遠い・近い」「高い・低い」「広い・狭い」などの空間的関係性を損なうことなく平面上に再現します。一般に「遠近法」という場合、ルネサンスの時代に西洋で確立された「線遠近法」を指します。そのほか、遠景を青灰色にぼかす空気遠近法、画面に対し垂直に配されたモチーフを縮めて描く短縮法など様々な遠近法が存在します。線遠近法は透視図法とも呼ばれ、視点の正面に位置する水平線上の一点(消失点)に平行線を集束させて描く方法で、消失点がひとつなら一点透視図法、ふたつなら二点透視図法と呼ばれます。イタリア・ルネサンスのブルネレスキやアルベルティによって体系化され、ピエロ・デッラ・フランチェスカやレオナルド・ダ・ヴィンチらの手によって完成されていきました。一方東洋では、独自の遠近表現が追及されました。遠いものを上、近いものを下に描く上下法や前後の対象を重ねる方法が一般的に採用され、唐代には山水画で遠近表現の定式化が進められていきました。北宋の画家・郭煕は、高遠(高く仰ぎ見る)、深遠(向こう側を見通す)、平遠(水平の広がりを見る)からなる三遠法を理論化し、視点を一点に定めた空間構成や、前のものを濃く後のものを淡く描く方法、奥行を計量的に表現する方法などを駆使して高度な遠近表現を実現させました。日本には江戸時代中期以後、西洋の線遠近法が伝わります。眼鏡絵や浮絵に応用されたほか、洋風画や浮世絵の風景版画に大きな影響を与えることとなりました。このように遠近法には、特定の文化圏において主体と世界との関係性をどのように捉えるかという、視覚形式としての側面もあります。