医師ガシェの肖像

Portrait of Dr. Gachet

フィンセント・ファン・ゴッホ

作品解説
ゴッホが亡くなる約1か月前、1890年6月に制作された作品です。作品のモデルとなったのはフランス・パリ近郊オーヴェル=シュル=オワーズ在住の精神科の医師ポール・ガシェで、晩年は彼がゴッホの主治医を務めていました。ガシェは美術愛好家でもあり、セザンヌやピサロらとも交友がある人でしたが、1890年にパリで初めてゴッホの診察をし、彼をオーヴェルでの療養に招きました。オーヴェルでのゴッホは再び創作意欲をよみがえらせ、村の風景や村人たち、そしてガシェをモデルに絵を描きました。7月に自殺を図り亡くなるまでの2か月間、ゴッホはこの村で約80点の作品を残しています。作中に描かれたガシェは数年前に妻を亡くしており、そのせいかどこか寂しげな表情を浮かべています。ガシェは肘をついたポーズをしていますが、これは西洋画では憂鬱を表すとされてきた図像です。ゴッホは妹に宛てた手紙の中で「僕は写真のようにただ似せるのではなく、情熱に満ちた表現で肖像画を描きたい。この作品では現代の社会そのものの悲痛な表情を伝えたいのだ」と、この作品について語っています。
制作年
1890年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス
所蔵美術館
    個人所蔵