回顧展

Retrospective
https://media.thisisgallery.com/wp-content/uploads/2018/12/b14a6f0993bbb91d77dbb71721d6116e.jpg
回顧展とは、特定のアーティストを取り上げ、その全生涯における作品や活動を紹介する展覧会のことです。レトロスペクティブとも言います。
現在では、主に美術の歴史においてきわめて大きな役割を果たしたアーティストの作品を、世界中の美術館や個人の蒐集家からその作品を借り受けるなどして、大規模な「回顧展」が当たり前のように開催されていますが、このような回顧展がはじまったのは19世紀の後半になってからで、それ以前は展覧会といえば社交界のサロンが中心でした。

回顧展のはしりと位置付けられているのは、1855年に開催された第1回パリ万国博覧会に対抗する形でギュスターヴ・クールベが開催した、自身の個展です。
パリ万博では、古典主義の巨匠ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルや、ロマン主義を代表する画家ウジェーヌ・ドラクロワの個展が開催されました。これらの展示もまたある種の回顧展と言えますが、いずれもその画家に注目して人生を振り返るというよりは、万博を盛り上げる華やかな企画展のひとつという位置づけでした。

それに対してクールベの個展は現状のアートのあり方に反発し、新しい風を呼び込むもので、現在企画される回顧展の多くは、クールベのように新しい発想やジャンルを切り開いたアーティストをテーマにして企画されます。
クールベは第2回パリ万国博覧会が開催されたときも、ふたたび自身の個展を独自に開催しており、クールベの個展に影響された画家たちが、その後は自主開催の個展を行う動きが起こりました。