原始美術

primitive art
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美術史では、先史時代に制作された彫像や壁画を「原始美術」と呼びます。旧石器時代後期に入った頃から、実用目的とは考えにくい遺物や、写実的文様を施した道具などが見られるようになります。原始美術の時代から現在までを1年に例えると、ルネサンスの登場でさえ12月30日の早朝に当たり、美術史の大部分はこの原始美術の時代が占めるのです。これら原始美術は今日でいう美術作品とは異なる性質のものですが、その表現は確かな美術的精神の目覚めを感じさせます。旧石器時代の遺物としては、フランスのクニャック洞窟に描かれた山羊の洞窟絵画、スペインのラス・チメネアス洞窟に描かれた鹿の洞窟絵画、ラスコー洞窟やアルタミラ洞窟の洞窟絵画、小さなものではブラッサンプイで出土した象牙彫りの女性頭部像などが有名です。この時代の美術的な特徴は、単純な輪郭線による写実的な表現や女性の生殖機能を強調した表現が挙げられます。中石器時代にはスペインのレバント美術、スカンジナビア半島からロシアにかけて発達した極北美術が登場。動物や人間を描いた岩陰絵画で、初期の写実的な表現から時代を追うごとに、小型化・簡略化・形式化が進みました。新石器時代に入ると土器の製作が始まり、その表面に線状模様が描かれるようになります。建築遺物としては、メンヒル、ドルメン、ストーンヘンジなどの宗教的な意味を持っていたと考えられる石製構造物が出土しています。日本の原始美術の代表例は、縄文土器や土偶です。その姿は現代にはない芸術的魅力に溢れています。縄文期の土偶は女性、特に妊婦をモチーフにしたものが多く、多産を象徴する「古代の女神」と考えられています。古墳時代に下ると古墳壁画が。高松塚古墳に見られる技法は、朝鮮半島の墳墓に見られるものに系譜を辿ることができます。これは西洋のフレスコ画にも通ずる技法です。