田中一光
Ikko Tanaka
1930年-2002年
国籍
日本
アーティスト解説
田中一光は、昭和期を代表するグラフィックデザイナーのひとりです。グラフィックデザイン、広告美術で活躍したほか、アートディレクターとして、企業のイメージ戦略をデザイン面から総合的に支える仕事に手腕を発揮しました。田中は数多くのポスター作品を手掛けましたが、中でも1954年から担当した「産経観世能」のポスターは、モダンデザインの方法論と日本の伝統的美意識とを融合する田中のデザインスタイルの結晶と、高く評価されています。現在東京国立近代美術館に所蔵されている、1981年制作のポスター「Nihon Buyo」は、その様式の代表的傑作です。アートディレクターとしての主要な仕事は、1973年より務めた西武流通グループ(西武百貨店)の仕事。ロゴ・マークからパッケージ、劇場・美術館のポスター、店舗の環境デザインまで、総合的に西部グループの企業戦略を支えました。緑とブルーの二重丸で構成された西部の包装紙は、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。1980年、西部グループの一員だった株式会社西友からプライベートブランドとして「無印良品」がデビューしましたが、田中は初代のアートディレクターとして、そのコンセプトワークの中心的役割を担いました。消費社会のアンチテーゼとして、シンプルで無装飾な中に真の良さと美しさを生み出す無印良品の思想は、35年以上経った現在でも揺るぎがありません。無印良品のロゴも田中の作品。シンプルでありながら非常によく考えられたバランスの上に成り立つ汎用性の高いロゴです。単純かつ面白みがあってインパクトの大きいLOFTのロゴも田中のデザイン。無駄を削ぎ落した中にある洗練された存在感。コンセプトワークにおいても卓抜したデザイン作品においても、それが田中の真髄と言えるのでしょう。
経歴
1930年 奈良市に生まれる。
1950年 京都市立美術専門学校(現:京都市立芸術大学)卒業、鐘淵紡績入社。
1952年 産経新聞社入社。桑沢デザイン塾講師を務める。
1957年 株式会社ライトパブリシティ入社。
1959年 日宣美展会員賞受賞。
1960年 日本デザインセンター創立に参加。東京ADC金賞受賞。
1963年 田中一光デザイン室を主宰する。
1968年 日本万国博覧会政府館1号館展示設計責任者に任命される。
1975年 西武流通グループ(セゾングループ)のクリエイティブディレクターに就任。
1980年 芸術選奨新人賞受賞。西武の無印良品のアートディレクターに就任。
1986年 銀座セゾン劇場のアートディレクターに就任。ニューヨークADC金賞受賞。
1991年 日本文化デザイン大賞受賞。
1994年 ニューヨークADC殿堂入り。紫綬褒章受章。
1998年 東京ADC グランプリ、朝日賞受賞。
1999年 第一回亀倉賞受賞。
2000年 文化功労者顕彰。
2002年 逝去。