スラヴ叙事詩-大ボヘミアにおけるスラヴ式典礼の導入

The Introduction of the Slavonic Liturgy

アルフォンス・ミュシャ

作品解説
ミュシャの最後の作にして最高傑作「スラヴ叙事詩」の中の1点が「スラヴ式典礼の導入」です。9世紀から10世紀にかけて、それまで移住を続けてきたスラヴ民族はチェコの東部地域モラヴィアに王国を築きました。この作品に描かれるのは、そのモラヴィアにおける神学者キュリロスによるスラヴ式典礼の導入場面です。当時ドイツの伝道団がキリスト教の普及を開始し、モラヴィア大公はスラヴ語の衰退を懸念しました。そこでキュリロスとその兄に命じて、聖書のスラヴ語への翻訳やスラヴ式の典礼の導入などを行い、スラヴの文化を守ったのです。彼らは今でもチェコをはじめとするスラヴ諸国において重要な聖人とされています。宣教師によってスラヴ式の洗礼を受けるモラヴィア国王ロスティラフや東方正教会に改宗した国民たちが輝くような白い光の中に描かれ、上方にはキュリロスとメトディオスの神々しい姿や4人の聖人、抱擁し合う信者などが、超次元的で非現時的な青い陰影の中に描写されています。最も近景に描かれた青年は高らかと両腕を掲げ、右手にはスラヴ民族の統一を象徴するひとつの輪を、自らの勝利と正統性を主張するかのように握っているのです。
制作年
1912年
素材/技法
壁画 油彩・テンペラ・画布
制作場所
チェコ
所蔵美術館
    ヴェレトゥルジュニー宮殿