不安

Anxiety

エドヴァルド・ムンク

作品解説
薄暗い夕方、カール・ヨハン通りの桟橋を歩き続ける人々が描かれた作品です。後方にオスロ・フィヨルドが配置され、湾や海岸線、空は薄暗い色調で渦がうねるように描かれます。湾には2隻の舟が浮かび、教会がぼんやりと見えます。これらの構図はムンクの最も有名な作品「叫び」と共通しており、2つの作品の主題からも、「不安」と「叫び」は酷似した作品であることが分かります。両作品の違いは、「叫び」ではムンク個人の恐怖体験が、「不安」では集団が抱く絶望や不安の感情が表現されていること。「不安」は、禍々しく歪む背景の中に首だけが浮かんで見える黒服の人々が茫洋と描かれています。自らの生死の苦悩を執拗に描いてきたムンクが、「集団での不安」という社会的な問題に題材を発展させ、鋭く表現した傑作です。
制作年
1894年
素材/技法
油彩
制作場所
ドイツ
所蔵美術館
ジャンル