病める子
The Sick Child
エドヴァルド・ムンク
作品解説
「病める子」はムンクの初期の作品で、リアリズムからドイツ表現主義への転換期に制作された作品です。ドイツ表現主義は客観的表現を排して内面の主観的な表現に主眼をおくことを旨とする芸術運動で、不安の感情を中心に表現しました。リアリズムとは異なる抽象的な描写や筆遣いが特徴です。この作品では、頭を白い枕にもたせかけた病床の少女と、少女の手を取り悲しみに打ちひしがれる付き添いの女性が描かれます。薄暗いカーテンは少女の死が差し迫っていることを表します。主題である少女以外の色彩が抑えられているために、少女の描写が一層際立ちます。作中の少女のモデルは、ムンクの姉ヨハンネ・ソフィエであると言われています。ムンクの最愛の姉でしたが、1877年肺結核により15歳の若さでこの世を去りました。ムンクは後に、同じく姉ヨハンネ・ソフィエの死をテーマに「病室での死」を描いています。若き日の姉の死は、ムンクを生涯「死の苦痛」というテーマに向かわせたのです。
制作年
1885年-1886年
素材/技法
油彩
制作場所
ノルウェー