別離

Separation

エドヴァルド・ムンク

作品解説
男性の恋愛を主題として、その人間関係や感情のあり様が表現された作品です。ムンクの描いた男女関係の作品にはストーリーの流れがあり、「接吻」に始まって「別離」に終わる一連の作品であると考えられています。画面前方には、恋人との別離に傷心し、悲しみに打ちひしがれる男性が描かれます。男性には未来へ進もうとする能動的な意志がうかがえますが、一方でその道は深紅色の植物マンドレイクで塞がれています。マンドレイクは幻覚作用があり、根の形が人に似ていることから魔術の儀式で使用されたという植物です。後方には、白い衣装の女性の後ろ姿が描かれます。彼女の髪は毛先の方で流動的な海岸線の曲線と同化し、男性を包み込む世界の一部となります。つまり女性は、男性がいまだ心の中に抱く過去の心象であると解釈できるのです。前に進もうとしても過去の記憶から逃れられない、男性の迷いと葛藤が表現されています。
制作年
1896年
素材/技法
油彩
制作場所
フランス
所蔵美術館
ジャンル