アイリス
Irises
フィンセント・ファン・ゴッホ
作品解説
この作品は、ゴッホがサン=レミ=ド=プロヴァンスの精神病院で療養中に描いたものです。ピストル自殺により命を絶つその前年に制作されました。その頃のゴッホは精神の錯乱に悩まされており、後期の作品には心の不安定さを反映したような緊張感に満ちた表現が支配的になってきますが、この「アイリス」の凛とした生命力にはそういった要素が見られません。ゴッホ自身そのことを自覚しており、アイリスのことを「わたしの病を軽くなるよう導いてくれる指揮者」と呼んでいました。画面中央、青い花を咲かせた美しいアイリスの明確で力強い描写は観る人の目を惹き付けます。そして、背景や花瓶に使用されている明度の高い黄色は、アイリスの青と色彩の対比をなし、強い輝きを放ちます。またこの作品には、強い輪郭線や平面的な着色、アングルやクローズアップの構図など、ゴッホの他の作品にも見られる日本の浮世絵の影響が表れていると指摘されています。
制作年
1889年
素材/技法
油彩
制作場所
フランス