自画像

Portrait de l'artiste

フィンセント・ファン・ゴッホ

作品解説
この作品は、ゴッホの自画像の中では最も著名なもののひとつであり、自身の耳を切り落とすという有名な耳霧事件の後、サン=レミの精神病院で療養生活を送っていた時代に描かれました。白いシャツと上着を着てやや斜めに構え、厳しく何か確信を内に秘めたような表情のゴッホの姿が描かれています。この作品の最も注目すべき点は、背景を埋め尽くした青い渦巻きの描写にあります。燃えうねる炎のようにも見える青白い渦巻模様は、ゴッホの狂気をも秘めた精神的内面を表していると考えられています。その一方で、そのターコイズブルーの明るい色づかいを、療養生活による精神の回復とゴッホの芸術へ再び向かおうとする意志と解釈する説もあります。ゴッホがこの絵について弟テオに宛てた手紙では、次のように語られています。「……いま描き終えた明るい背景の自画像をパリ時代の自画像のそばに並べてみたら、あの当時よりもいまの方が健康で、しかもずっと健康そうに見えることがわかるに違いない」この時のゴッホは、果たしてどのような心境を内面に抱えていたのでしょうか。
制作年
1889年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス
所蔵美術館