花がたみ

Flower Basket

上村松園

作品解説
『花がたみ』は上村松園の1915年の作品です。「花筐(はながたみ)」とは世阿弥作とされる能の一曲で、成立は室町時代にさかのぼります。舞台は春の越前国・味真野です。皇位を継ぐため都へ向かった大迹皇子は、使者を最愛の女性・照日の前の元に遣わします。皇子からの文と愛用の花筐を届けられた照日の前は悲嘆にくれ、それらを抱いて故郷へ帰ります。やがて皇位を継いだ大迹皇子は紅葉狩りに向かい、皇子を慕うあまり都へとやってきた照日の前に出会います。しかし帝の行列を汚す狂女として花筐を打ち落とされてしまいます。花筐を見た帝はそれがかつて自ら与えたもので狂女が照日の前であると気づき、再び照日の前を召し出して都へと帰っていくという物語です。松園は「高貴な女性の狂気」というイメージを求めて、精神病院を訪れて患者を観察したり、名妓や能面の写生を重ねたと言います。
制作年
1915年
素材/技法
不明
制作場所
京都
所蔵美術館