自己消滅(網強迫シリーズ)
Self-Obliteration
草間彌生
作品解説
幼い頃から、水玉が視界を覆うといった幻覚に悩まされていた草間彌生。彼女はその恐怖から逃れるため、その光景を描きとめるようになりました。草間は1957年秋に単身アメリカに渡り、ニューヨークで活動を開始し、小さな網目状のストロークでキャンバスを埋めていくネット・ペインティングで注目を集めるようになります。やがて草間の手法は、無数のオブジェやモチーフを作品中に集積させる「アキュミレーション(集積)」というスタイルに発展していきますが、さらに自分自身の身体も作品中の集積のひとつとして取り込む表現をするようになりました。「自己消滅(網強迫シリーズ)」も、こういった手法で描かれた作品のひとつです。水玉や網目が自らの体、周りのものや空間に広がっていくと、自身の体も水玉や網目の中に埋没する。水玉は一つ一つが生命の象徴であり、その水玉や網目に覆われることで自己も他者も、宇宙のすべてが消滅するのです。こうして、自己の存在を消す「自己消滅Self-Obliteration」のシリーズが生まれていきました。
制作年
1966年頃
素材/技法
不明
制作場所
アメリカ