男根の庭(フロアショウ)

Phalli’s Field (Floor Show)

草間彌生

作品解説
「男根の庭」は草間彌生の初期のミラールーム作品です。ミラールームとは、設置場所の空間全体を作品化するインスタレーションのひとつで、鏡とそれによるオブジェの反復によって空間が無限に広がるような表現が特徴の作品。この「男根の庭」を契機に草間はミラールームを何度も制作するようになり、やがて草間の代表的な作品シリーズとなっていきました。鏡に囲まれた空間に、赤い斑点を持つ男根状のソフト・スカルプチャーが生い茂る、独特の迫力を持った作品です。草間は松本の財産家に生まれ、女遊びを繰り返す婿養子の父と抑圧的な跡取り娘の母のもと、セックスに対する罪悪感を植え付けられながら育ちます。その結果セックスや男根に対する恐怖を抱くこととなった草間は、男根の形をしたたくさんのオブジェでびっしりと対象を埋める作品を繰り返し作ることで、その恐怖を克服し、心の傷を治していきました。鏡に増幅され無限に広がる奇怪な男根のオブジェ。恐怖と嫌悪の対象は、徐々に滑稽でおかしなものに変化していきます。この作品を見る時、草間の心が癒される過程も同時に、見えてくるのかもしれません。
制作年
1965年初公開
素材/技法
インスタレーション(ミラールーム)、ソフトスカルプチャー