晩鐘
The Angelus
ジャン・フランソワ・ミレー
作品解説
ミレーがバルビゾ村に生活し、農民画を中心に描いていた時期の作品です。バルビゾンに隣接するシャイイ=アン=ビエールの平原に晩鐘が鳴り響き、それを合図に農民夫婦が手を休め、「主の御使い…」で始まる祈りを捧げる様子を描いています。1865年2月にパリで展示された際、ミレーはこの作品について次のように述懐しています。「かつて私の祖母が畑仕事をしている時、鐘の音を聞くと、いつもどのようにしていたか考えながら描いた作品です。彼女は必ず私たちの仕事の手を止めさせて、敬虔な仕草で、帽子を手に『憐れむべき死者たちのために』と唱えさせました」ミレーの育った家はカトリックですが、この作品にはカトリックの宗教画に用いられるキリスト像や十字架といったモチーフが使われていません。制作を依頼した美術収集家のトマス・ゴールド・アップルトンがリベラルなプロテスタントであったため、その意向が反映していると考えられています。しかし宗教画のモチーフのあるなしに関わらず、この絵にみなぎる静謐な祈りと平和は、深い宗教的な感動を呼び起こします。
制作年
1857年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス