ユディトⅠ
Judith I
グスタフ・クリムト
作品解説
美しく裕福なユダヤの未亡人ユディトが、アッシリアの敵将ホロフェルネスの首を落としベツリアの街をすくったという、旧約聖書の「ユディト記」の一場面を描いた作品です。このモチーフはクリムト以外にも、カラバッジオやクラナッハなど多くの画家が絵にしているのですが、クリムトの描いたこのユディトは、その蠱惑的で艶めかしい美しさで、他作品との違いを強烈に印象づけるものです。英雄的な姿でユディトを描くのではなく、匂い立つような妖艶性と官能性を全面に押し出し表現しています。薄く唇を開け白い歯を見せた見ようによっては挑発的な表情と、薄く透き通った衣服やそこから覗く右乳房などが、エロティックな妄想や官能性を掻き立てる効果を生み出しています。クリムトの生前、この作品は展示会やカタログにおいて「サロメ」と題されたとも言われます。ユディトの黒髪とコントラストをなす黄金の豪華な背景表現は、クリムトの「黄金の時代」と言われる金箔装飾の初期のものと言えるでしょう。
制作年
1901年
素材/技法
油絵
制作場所
オーストリア