フリツァ・リードラーの肖像
FRITZA RIEDLER
グスタフ・クリムト
作品解説
「フリッツァ・リードラーの肖像」は、クリムトの手がけた肖像画の中で最もよく知られた作品のひとつです。この作品を発表した前年の1905年にクリムトはウィーン分離派を脱退し、続いてこの年オーストリア芸術家連盟を結成しました。クリムトは「黄金の時代」の金装飾表現を脱して幾何学模様と多様な色彩を用いるようになりますが、この作品はそこに至る少し前の時期の制作です。この作品で最も特徴的なのは、写実的に描写されるフリッツァ・リードラーの顔と、それとは対照的な、背景や装飾具、家具などの平面的抽象的表現との対比にあります。彼女の頭部背景には幾何学模様のデザインが配置され、まるで表情部分だけが額縁に入ったかのように、彼女の柔和な微笑みが強調されます。直覚的な線で複雑に描かれた模様は遠近感がなく、モデルが着る衣装の模様や表現も部分部分で変化しており、全体的に不統一で不思議な印象を与えます。これらの対比は比喩表現と抽象的な表現の両方を感じさせ、クリムトがやがて迎える画家としての変化を予感させる作品となっています。
制作年
1906年
素材/技法
油絵
制作場所
オーストリア