象
The Elephants
サルバドール・ダリ
作品解説
細く長い脚をもつ象は、ダリいわく宇宙象として1946年の「聖アントワーヌの誘惑」以来、様々な作品の脇役として描かれてきました。しかし、この作品では、脇役ではなく主役として描かれています。一般的に象は、強さや重さを表現され、支配や権力などを象徴する際に利用されてきましたが、ダリが描く象は、細長い足によって、むしろひ弱なイメージをもたせています。これは、「欲望がほとんど見えない多関節の足」として、強さと弱さを対比表現するために描いたようです。さらに、細長い足を持ちながらも、背中にはイタリアの彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの彫刻から引用した巨大な記念碑(オリベスク)を背負っており、強さと弱さの対比をさらに強めています。そのうえ、宇宙象とダリが呼んでいるように象は浮遊しています。この理由をダリは、「宇宙の無重力空間では、ずっしりとした重みの象でも軽々浮いてしまうものだから」と話し、地上における権力の強さと宇宙における無重力(無力)の対比を表現したかったそうです。
制作年
1948年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
不明