果蔬涅槃図

Scene of Buddha’s Nirvana by Vegetables

伊藤若冲

作品解説
野菜と果物で釈迦入寂の場面を表現した作品です。釈迦に見立てられているのは伏せた籠の上の二股大根。それを取り囲む様々な京野菜や果物は釈迦の死を悼む菩薩や羅漢、動物・鳥たち、彼らを抱きかかえる沙羅双樹はとうもろこしです。野菜と果物による見立て涅槃図で、もともとは京都・誓願寺の什物でした。涅槃図のパロディとしてしばしば語られることがありますが、若冲は「動植綵絵」や「釈迦三尊図」を相国寺に寄進するほどの敬虔な仏教徒。1779年の母の死を契機として、その成仏と家業の繁栄を祈ったものとみる説が有力です。勿論、若冲が京都・錦小路の青物問屋の跡継ぎとして生まれ育ち、1755年、弟に家督を譲るまでその主であったことも、無関係ではないのでしょう。ユーモラスな表情を見せながら活気に満ちた画面、中墨のふくよかな面と線に潔い濃墨のアクセント。無色の水墨画ながら情景を雄弁に語りかけてきます。若冲は、「動植綵絵」のような着色花鳥画ばかりでなく水墨画にも、中国明末の逸品画風に通じる新しい境地を開いたのでした。
制作年
1779年または1794年-1800年頃
素材/技法
紙本墨図 一幅
制作場所
日本
所蔵美術館
ジャンル