貝甲図(動植綵絵)
Shells
伊藤若冲
作品解説
「動植綵絵」は1757年から1766年頃にかけて制作された、伊藤若冲の代表作のひとつです。「釈迦三尊図」と共に両親と弟、若冲自身の永代供養を願って相国寺に寄進されたもので、堂内を荘厳するセットとして一堂に掛けられたものでした。鳥、鳳凰、草花、魚介類などが、様々な色彩と形態のアラベスクを織り成す華麗な作品で、綿密な写生に基づきながらもどこか幻想的な雰囲気とおかしみが漂います。この「貝甲図」は「池辺群虫図」と同様のコンセプトで、虫の代わりに貝をモチーフとしています。海の描写は引き潮時の海水の残る砂浜のようでもあり、珊瑚が生息する水中のようでもあり。さらに「蓮池遊魚図」に典型的に見られる、異なる視点が同一の場に同時に存在する構図となっています。貝自体は、博物学がブームになっていた時流を背景に、実在する種を調べて描いたものと推測されていますが、現実にはない不思議な形も混ざります。貝も珊瑚も波も全て意匠化されたモチーフであり、若冲はそれらをコラージュして一幅の絵を創り上げているのです。近代のシュルレアリスムにも通ずるものであり、若冲の前衛性をあらためて感じる作品と言えるでしょう。
制作年
1761年頃-1765年頃
素材/技法
絹本着色 一幅
制作場所
日本