スフマート
Sfumato
スフマートは、イタリア語で「くすんだ」「薄れる」といった意味の言葉で、「煙(Fumo)から派生しています。深みやボリュームを出すために、透明になるほど油絵の具を薄く解き、下の層が見えるように重ねて塗るのです。それを繰り返すうちに、色の移り変わりが認識できないほどわずかに色を変え、自然にぼけてグラデーションになっていくのです。絵の具が乾いてからまた塗る、という作業を何度も繰り返すため、とにかく時間がかかるのも、スフマートの特徴。16世紀に絵画に取り入れられたとされるスフマートを使用した絵画でもっとも有名なのは、いわずと知れたレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」でしょう。とくに「モナ・リザ」の口元にある陰影は、スフマートの優れた例といっていいでしょう。また目のくぼみの部分にもスフマートが用いられ、それらが彼女の不思議な微笑みを作っているといっても過言ではないでしょう。ダ・ヴィンチは「ものに輪郭はない」として、輪郭線を描きませんでした。その代わり、スフマートを用いた陰影で違いを表現しようとしたのです。時間がかかるという点では、完璧主義者だったダ・ヴィンチに合った方法ともいえるでしょう。スフマートはその後、アンドレア・デル・サルトやコレッジオが受け継いでいきました。