谷口吉生
Yoshio Taniguchi
1937年-
国籍
日本
アーティスト解説
谷口吉生は、建築本来の表現と確かな技に支えられたモダニズム建築の担い手として、世界で最も注目を浴びている建築家のひとりです。メディアへの露出も少なくコンペにもほとんど参加しない、極めて「作品主義」の建築家と評価されています。慶応義塾大学、ハーバード大学GSDで学んだ後、丹下健三のもとで研鑽を積みました。1970年代から80年代にかけては国内外の様々な大学で教鞭を取り、1978年、谷口40歳時の「金沢市立図書館」が、建築家として事実上のデビュー作になります。その後谷口は「資生堂アート・ハウス」「土門拳記念館」を立て続けに手掛け、流行や自己主張に左右されない、シンプルで確固としたモダニズム建築を提示しました。谷口のモダニズム建築の特徴は環境に対する巧みな対応の表現にあります。建物内外の空間のボリューム対比、力強さ、光の取り入れ方、細心の注意を払って配置されたディティールの収まりなど、けれん味のない確かな技術と表現によって、建物が周囲の環境の中に最適な存在感で立ち上がるのです。「日本アイ・ビー・エム幕張テクニカルセンター」「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「豊田市美術館」などではアメリカのランドスケープ・デザイナー、ピーター・ウォーカーと協同、「東京国立博物館法隆寺宝物館」では建物と前庭を絵画的に対比し、日本的モダニズムの再発見ともいえるデザインを行いました。2004年には、谷口の唯一のコンペ参加作品「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」の増改築プロジェクトが完成、リニューアルオープンの運びとなります。作品から作品へと自由にアプローチできる順路設定や、ニューヨーク市の存在を強く意識させる展望の仕掛けなど、各方面から高い評価を得た作品です。このMoMAやそれまでに手掛けた美術館の設計により、2016年には優れた文化遺産建築の功績をたたえる「ローマ・ピラネージ賞」が贈られています。
経歴
1937年 東京にて、建築家谷口吉郎の長男として生まれる。
1960年 慶應義塾大学工学部機械工学科卒業。
1964年 ハーバード大学GSD(大学院大学デザイン・コース)修了。
1964年 東京大学都市工学科丹下研究室および丹下健三都市・建築設計研究所に入る。
1970年 1980年まで、ケープタウン大学、UCLA、ハーバード大学、東京大学、東京工業大学で教鞭を取る。
1979年 谷口建築設計研究所所長に就任。
1980年 「資生堂アートハウス」で日本建築学会賞受賞。
1984年 「土門拳記念館」で吉田五十八賞受賞。
1987年 「土門拳記念館」で日本芸術院賞受賞。
1990年 「東京葛西臨海水族園」で毎日芸術賞受賞。
1994年 「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」村野藤吾賞受賞。
1997年 「ニューヨーク近代美術館」増改築の国際指名設計競技で当選。
1998年 「京都国立博物館百年記念館」の設計者として選定される。
2001年 「東京都国立博物館法隆寺宝物館」で日本建築学会賞受賞。
2003年 東京芸術大学美術学部建築科客員教授に就任。
2004年 「ニューヨーク近代美術館」増改築を手掛ける。
2005年 高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)受賞。
2008年 日本芸術院会員となる。
2011年 旭日中綬章受章。
2016年 ローマ・ピラネージ賞受賞。