カラスのいる麦畑
Wheatfield with Crows
フィンセント・ファン・ゴッホ
作品解説
この作品は、パリ北西オーヴェール＝シュル＝オワーズにて、友人であり精神科医でもあったポール・ガシェ医師の療養院で生活していた最晩年に描かれた作品です。一般的にゴッホの最後の作品と言われていますが、この後に描かれた作品があるとの指摘もあります。この作品に描かれる麦畑の風景は、その当時のゴッホの精神状態をそのまま反映させたかのように、陰鬱で暗く、孤独感と寂寥感に満ちています。力強いタッチで表現された麦畑は強い色彩的輝きを放ちつつもどこか落ち着かない不穏さをはらみ、空の濃青色とのコントラストや風にざわつようなうねる様相も、その印象を強めます。さらに低空を飛ぶカラスの一群は、ゴッホ自身の死を予感させる不吉な緊張感を添えます。カラスは「死と再生」や「蘇生」の象徴として以前から使っていたモチーフで、作中の鳥やカラスはゴッホ自身を表しているといいます。この作品が描かれた少し後に、ゴッホはピストルで自らの命を絶つこととなりました。
制作年
1890年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス
