死と生

Death and Life

グスタフ・クリムト

作品解説
クリムトの晩年期の代表作で、1911年にローマ国際美術祭で金賞を受賞した作品です。一度完成させ賞を獲得するも、クリムトはその後5年の時をかけて大幅に加筆修正を加えています。クリムトは「生」と「死」をたびたび作品で描いてきましたが、この作品は人間の「生」と「死」の対峙、その循環をテーマとしています。大人、子供、男、女、若人、老人など人生の様々な段階にある10人もの人々が、互いに寄り添いひとつの塊となった姿で表現される「生」。暗い色のローブと十字架のシンボルに覆われた髑髏姿の「死」に対し、一塊となることでお互いの生命を守っているかのようです。しかし彼ら彼女らは目を閉じ、まどろみや深い眠りの中にあります。眠りという小さな死の中にある彼らは一塊の死体とも言えるのであり、クリムトは「生」そのものの中に既に「死」が存在することを暗示しているのです。表現技法としては多色的な色彩表現が注目されます。マティスに始まるフォービズムや若きエゴン・シーレなどの台頭によって名声に陰りが見え始めたクリムトが、自身の確立した黄金の装飾性豊かな表現様式を捨て、新たな道を見出した分岐点にある作品です。
制作年
1910年-1911年、1915-1916改作
素材/技法
油絵
制作場所
オーストリア
所蔵美術館