乙女(処女)
Virgin
グスタフ・クリムト
作品解説
「乙女(処女)」は、クリムト晩年期の様式を代表する作品です。19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパでは、多種多様な美術様式が登場したことにより、黄金を多用した豪華な装飾表現で確立したクリムトの名声にも陰りが見え始めます。彼は自らの確立した黄金表現を捨て、新たな表現を模索し探求するようになるのです。7人もの乙女たちが、複雑に絡み合い楕円形の塊のような形で、図案化されて描かれます。大きく取られたポーズ、敷き詰められた花々から垣間見える体の一部や夢見るような顔は、優雅でなめらかな美しさです。一方で無限定の空間の広がりを漂っているかのような乙女たちの浮遊感は、観る者に対して不思議な漠然とした不安感も抱かせます。特筆すべきは、空間構成がまったく行われない平面的な背景表現と、乙女たちの図案化された衣装の奔放な多色的色彩表現の対比です。モチーフの多用、黄金のきらびやかな装飾と決別した多彩な色彩表現は、晩年のクリムト作品が到達した新しい表現様式の特徴です。
制作年
1912年-1913年
素材/技法
油絵
制作場所
オーストリア