Road

東山魁夷

作品解説
東山魁夷はこの作品について「遍歴の果てでもあり、また新しく始まる道でもあり、絶望と希望を織りまぜてはるかに続く一筋の道であった――遠くの丘の上の空をすこし明るくして、遠くの道がやや右上りに画面の外に消えていくようにすることによって、これから歩もうとする道という感じが強くなった」と語っています。この作品のもととなったのは、魁夷が第二次世界大戦前にスケッチして歩いた青森県八戸市の種差海岸の風景です。戦争が終わってから、スケッチから灯台や放牧馬などをすべて省き、道ひとつに構図を絞って描いたのがこの作品です。戦争中、画家たちは自由に絵を描くことができませんでした。絵の具などの画材もなかなか手に入らない時代で、国から依頼され、画材を与えられて戦争の記録画を描いた画家もいました。兵士として召集された者もあり、魁夷自身も招集を受け、短い間ですが兵役につきました。「道」は戦後ふたたび絵筆をとれるようになって描かれたものです。実際の種差海岸の風景に取材しながらも、暗い遍歴と新しい未来と絶望と希望とを見つめる魁夷の心象が、画面の端に消え外に続く道の風景に昇華されています。
制作年
1950年
素材/技法
絹本彩色
制作場所
日本
所蔵美術館
    国立近代美術館
ジャンル