シリーズ「海景」
Seascapes
杉本博司
作品解説
「海景」は杉本博司の制作のシリーズのひとつで、世界中の海岸で水平線が上下均等に分けている構図の写真を撮影した作品です。海と空が四角い画面の中で、明確な直線で区切られている写真もあれば、霧で霞んでそれらの境界が全く見えない作品もあります。この作品について杉本博司は著書の中で「私たちの命が生きていくためには、水の他に空気も必要だ。空気は空気のような存在である。目に見ることはできない。しかしこの広い宇宙の中で地球だけが水と空気を保っているらしいのだ。そしてこの水と空気こそがすべての生命を支えている根源的な物質なのである。私はその水と空気そのものを、写真を使って提示することにした。」と語っている。現代の進んだ技術の先に存在する海や空気は今存在しているそれらとは異なっているかもしれないという考えに基づいた記録的な意味での作品であると同時に、一瞬一瞬を切り取る写真で地球の数十億年という途方もない歴史を感じさせる作品でもあると言えます。
制作年
1980~2002年
素材/技法
ゼラチン・シルバー・プリント
制作場所
不明