虎図

Tiger

伊藤若冲

作品解説
「虎図」は虎を描いた絵を忠実に写した、模写作品です。款記に「我画物象非真不図、国無猛虎倣毛益摸」(我物象を画くに真に非ざれば図せず/国に猛虎無ければ毛益に倣ひて摸す)とあり、若冲本人は南宋の画家毛益の作を模倣したと述べているのですが、実際は正伝寺所蔵の李公麟筆「猛虎図」が原画であると考えられています。若冲は先人の画を模写した作品をいくつか残していますが、忠実に写しているのに若冲らしさが滲み出てくるのが面白くも魅力的なところ。この「虎図」にも、ディテールの描き込みやデフォルメに若冲らしさが漂います。原画では黄土色の絵の具で虎の毛を一本ずつ丁寧に描いているのですが、若冲は黄土色で下塗りをした上から、墨で細かい線を描き加えています。この技法は若冲の独創と言ってもよく、動植綵絵のなかの鳳凰の描き方にも用いられている描き方です。丹念かつ繊細な線の描写は、後にさらなる洗練の度合いを見せることとなるのです。また虎の輪郭線の外側を薄い墨で塗り、虎が浮き出て見えるように工夫していますが、逆に平面的な印象を醸し出し、押し絵のような効果が出ているところも面白いところです。
制作年
1755年
素材/技法
絹本着色 一幅
制作場所
日本
所蔵美術館
    個人蔵
ジャンル