月に叭々鳥図

伊藤若冲

作品解説
叭々鳥はアジア東部や中国南部に生息する鳥で、吉祥鳥として水墨花鳥図の中でも流行した画題のひとつです。この若冲の「月に叭々鳥図」も叭々鳥図のひとつなのですが、若冲らしいユーモラスな可愛らしさに溢れています。真っ逆さまに落ちる叭々鳥が画面中央に一羽、背景には月夜の明るい空。月は「外隈/そとぐま」という輪郭を塗り残すことで形を表す技法で、画面に一部しか入らない大きな月として描かれます。空は淡墨の水平な筆跡を重ねた淡い色彩です。叭々鳥の表情描写が秀逸です。真ん丸に見開いた眼と毛羽立った顔周りの毛のタッチ、そして思わず開いた口から少しだけ覗く舌が、叭々鳥の緊張感を表すようです。若冲の描く生き物の可愛らしさ、そこには生き生きとした確かな生命力と豊かな表情があるのですが、それは若冲が庭の鶏や雀の模写と写生を繰り返し、対象の姿や本質をとらえる力と対象に向ける暖かな目を養ったことの結実に他ならないのでしょう。
制作年
18世紀後半 江戸時代中期
素材/技法
紙本墨画 一幅
制作場所
日本
所蔵美術館
ジャンル