紅葉小禽図(動植綵絵)
Maple Tree and Small Birds
伊藤若冲
作品解説
「動植綵絵」は1757年から1766年頃にかけて制作された、伊藤若冲の代表作のひとつです。「釈迦三尊図」と共に両親と弟、若冲自身の永代供養を願って相国寺に寄進されたもので、堂内を荘厳するセットとして一堂に掛けられたものでした。鳥、鳳凰、草花、魚介類などが、様々な色彩と形態のアラベスクを織り成す華麗な作品で、綿密な写生に基づきながらもどこか近代のシュルレアリスムにも通じる幻想的な雰囲気が漂います。後に相国寺より明治天皇に献納され、現在は宮内庁の三の丸尚蔵館蔵となっています。そのひとつである「紅葉小禽図」は、美しく紅葉した楓の鮮やかさと、オオルリと考えられる小禽の白と青の対比が印象的な作品です。植物の方が小禽の前景に出る構図。600枚近くもある楓の葉は、辰砂、鉛丹、黄土、胡粉など表裏の彩色を変えることで、微妙な色彩の違いを表現しています。背景を単調にすることで、葉の美しさがかえって引き立ちます。面白いのは、濃淡や色合いの差を伴いつつも楓の葉がほぼ同じ形に描かれていること。画面左方に伸びる三本の枝も同じ方向を向いており、この絵は図案的な反復表現に溢れていると言ってよいでしょう。
制作年
1765年頃-1766年頃
素材/技法
絹本着色 一幅
制作場所
日本