雪中鴛鴦図(動植綵絵)

Mandarin Ducks in Snow

伊藤若冲

作品解説
「動植綵絵」は1757年から1766年頃にかけて制作された、伊藤若冲の代表作のひとつです。「釈迦三尊図」と共に両親と弟、若冲自身の永代供養を願って相国寺に寄進されたもので、堂内を荘厳するため一堂に掛けられたものでした。鳥、鳳凰、草花、魚介類などが、様々な色彩と形態のアラベスクを織り成す華麗な作品で、綿密な写生に基づきながらもどこか近代のシュルレアリスムにも通じる幻想的な雰囲気が漂います。「雪中鴛鴦図」は冬の水辺の雪景色を描いた一幅です。雪の冷たさと寒々とした空気、周囲の音すら吸収してしまうかのような静寂とストップモーション。厳しい冬の自然の営みを鮮明かつ幻想的に描き出しています。色鮮やかなオシドリの雄には顔料と染料を併用し、精緻な描写を行っています。背景の暗さは絹地の裏に黒く塗った紙を貼り付ける方法で演出。木の枝に積もった雪は裏彩色を巧みに使った繊細な明暗で柔らかい立体感を出し、中空を舞う雪の表現には、胡粉を吹き付けるという大胆な手法を表裏両面から施し、微妙なニュアンスと奥行きを生み出します。緻密で精細な描写と吹付による偶然性を見事に融合させた、天才の煌めきを感じさせる傑作です。
制作年
1759年
素材/技法
絹本着色 一幅
制作場所
日本
所蔵美術館
    宮内庁三の丸尚蔵館
ジャンル