落穂拾い
Des glaneuses
ジャン・フランソワ・ミレー
作品解説
バルビゾン派絵画の代表作と位置付けられる、ミレーの農民画の傑作です。パリの政治的混乱やコレラを避けて、当時芸術家たちの集まっていたバルビゾン村に疎開していた時期の作で、1857年サロン・ド・パリ(官展)出展作品。パリ郊外の都市フォンテーヌブローの森のはずれにあるシャイイの農場で、貧しい農民が落穂拾いをする情景を描いています。落穂拾いとは刈り取りの終わった畑に散らばる穀物の穂をひとつひとつ拾う作業のことで、自らの土地を持たない貧しい寡婦や貧農などが、命をつなぐための権利として行うものです。旧約聖書の申命記には「それは、在留異国人や、みなしご、やもめのものとしなければならない/あなたの神、主が、あなたのすべての手のわざを祝福してくださるためである」という一節があり、心ある地主はわざわざ多くの落ち穂を残したとも言われます。この最貧農民の姿を取り上げた作品は、当時政治的プロパガンダとも批評されました。ミレーは「見たままを描いた」とのみ答えていますが、近景と遠景のコントラストの中に貧しい農民のリアリティを浮かび上がらせたミレーの卓抜した技量と、彼らに向ける深く優しいまなざしに、心が打たれます。
制作年
1857年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス