鍬に寄りかかる人

Man with a Hoe

ジャン・フランソワ・ミレー

作品解説
1863年、サロンに出展した作品です。鍬を使って耕地の雑草や草の芽を取り除く作業は、農民にとって最も重い労働のひとつであり、屈強な農夫でさえ疲労困憊し、休息を必要とするものでした。この作品に描かれた農夫は、激しい疲労をやわらげるため鍬にもたれて短い休憩をとっているところです。汗だくで顔色は茶色く灼け、唇も乾燥してひび割れているように見えます。出展当時、この作品は批評家からの酷評を浴びました。当時のフランスでは地方の農村生活者を低く見る傾向があり、地味で暗い労働を描いた作品よりもドラマティックでスキャンダラスな作風のものが高く評価されたからです。しかしミレーは「額に汗し、泥にまみれ、大地で働く姿を描くことこそ人間の尊厳を表すものだ」を生涯貫き、農民画家としてこつこつと傑作を生み出していきました。批評家の中にはミレーの作風に強い関心と理解を示す人も徐々に増え、作品も売れ始めるようになりました。この作品を発表した数年後にはフランスを代表する画家となり、政府から勲章をもらうまでになるのです。
制作年
1860年-1862年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス
所蔵美術館
    J・ポール・ゲティ美術館
ジャンル