死と木こり
Death and the woodcutter
ジャン・フランソワ・ミレー
作品解説
ファンテーヌの「寓話」にある、生活苦の木こりが苦しみに耐えかねて死を求めると死神がすぐにやってきた、という場面を描いた作品です。この作品は1859年のサロンに出展して落選しましたが、世間の話題を誘いました。この作品に感銘した者の中にはゴッホもいたと言われます。この絵の特徴は、死神の方をはっきりと描くことによって、非現実の場面をまるで現実の出来事であるかのように表現した点です。基となったファンテーヌの「寓話」は、続く内乱に悩まされていた1850年代のフランス市民にもてはやされ、「死への願望」を表現する美術作品の主題にもなりました。しかしミレーの作品には、単なる寓話を越えた労働者の叫びが感じられます。第二帝政と近代化によって押しやられ、生活そのものを脅かされていた貧しい労働階級には、もはや死を願うしかないという追い詰められた怒りがあるのです。その真実味がまた、この作品がサロンに落選した理由でもあるのでしょう。
制作年
1858-59年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス