羊飼いの少女

Shepherdess with Her Flock

ジャン・フランソワ・ミレー

作品解説
1864年のサロンに出展され、1等賞を獲得した作品。「絶妙な絵画」「傑作」といった温かい評価を受け、ミレーは国民的画家の地位を確立します。それほどまでに、この平和で落ち着いた静かな作品は、人々の心を魅了しました。羊毛のケープと赤い被り物を身に着けた羊飼いの娘が、軽くうつむき編み物をしています。羊の群れは夕陽を受け、波打つ光のパッチワークを作ります。すべてが薄暮の穏やかな光の中に包み込まれ、平和で静謐な世界が広がっています。この優しく穏やかな作品世界は、絵の販売の仲介も依頼していた親友アルフレッド・サンスィエのアドバイスによるものだといいます。それによってミレーは、ともすれば農村の貧困を告発する危険な思想と評価されがちだったそれまでの作品を越えて、多くの人々の支持を受ける普遍的な美しさへと世界を拡げたのです。また、それまでの作品では普遍性を持たせるためあえて人物の表情を曖昧にしていましたが、この作品では少女の顔は丁寧に描き込まれることとなりました。ミレーの次女ルイーズがモデルだと言われています。
制作年
1863年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
フランス
所蔵美術館
ジャンル