早乙女

Young Ladies Planting Rice

川合玉堂

作品解説
1944年東京西多摩郡御岳に疎開し、さらに同じ西多摩の古里村白丸に移った河合玉堂の、白丸疎開中に描いた作品が「早乙女」です。玉堂は次の年に東京牛込若宮町の自宅が戦災で焼失すると、その暮れには御岳に移り、そこをついの住処としました。この晩年10年の奥多摩生活によって、玉堂芸術は自然と人間と伝統画法とが溶け切ってひとつになるところに進んだと言われます。「早乙女」は、光る初夏の水田で、無地や絣の着物に赤や緑色の帯をしめた早乙女が楽しそうに田植えをしている絵です。枯れた味わいの水墨画でもなければ華やかな花鳥図でもない、淡々とさらっと描いたような筆触のリラックスした絵で、平和でのんびりとした雰囲気に満ちています。玉堂の絵は穏やかで中庸、平明でやさしく、一方で淡々としながらも埋没しない強さとしぶとさがあります。里山の自然や人間のささやかな営み、生活の余情を愛した玉堂の、あたたかい魅力が伝わってくる絵です。
制作年
1945年
素材/技法
絹本彩色、軸装
制作場所
日本
所蔵美術館
ジャンル