彩雨

Autumn Rain

川合玉堂

作品解説
「彩雨」は河合玉堂の代表作のひとつ。1940年の紀元2600年奉祝展に出品された作品です。この作品が発表されたまさにその月に大政翼賛会が結成され日本は戦争へと進んでいくのですが、その政情不安の中にあっても、自然の美しさとそこに生活する人々のささやかな営みに向けられる玉堂の眼差しは、日本人に対する深い愛情と慈しみに溢れています。「彩雨」は、柔らかな雨に煙る山中の一軒家を描いた絵です。水車にかかる流れの音と、紅葉をしっとりと濡らす雨音が呼応して聞こえてくるようです。玉堂は戦争の終盤に奥多摩に疎開し、東京牛込若宮町の自宅が焼失した後は居を移して終生そこに住むことになるのですが、この作品に見られる自然と溶け込み穏やかに暮らす静かな喜びこそ、玉堂の芸術を深々と浸すものなのではないでしょうか。
制作年
1940年
素材/技法
絹本彩色、軸装、一幅
制作場所
日本
ジャンル