飛神(とびがみ)の柵(御志羅の柵)

Fence of Tobigami

棟方志功

作品解説
「飛神の柵」は、版画でありながら棟方志功がたった一枚しか刷らず、生涯大切に所持していた、世界でたった一点の作品です。幅1m40cm、高さ1m余りの彩色された木版画で、鮮やかな色彩とダイナミックな構図が印象的です。「飛神の柵」は「御志羅の柵」(おしらのさく)とも呼ばれた作品で、そのモチーフは青森や岩手など東北に伝わるおしら様信仰です。おしら様は養蚕の神様で、家内安全や家運長久を司るとして家々で祀られた神様です。その由来譚に、名馬と長者のお姫様の恋と蚕への生まれ変わりの物語があります。おしら様は飛ぶ神様で、他の家のおしら様が空を飛んで自分の家へやってきたという言い伝えもあり、それで「飛び神」とも言うのです。棟方はこのおしら様のモチーフに、かつて縄文文化が栄えた青森の地のプリミティブな生命力と、青森の夏の夜を彩るねぶた祭の「ねぶた」の燃えたぎる情熱の赤を混ぜ合わせて、青森の幸せと豊かさへの礼賛と祈りを表現しました。この「飛神の柵」が制作された棟方60歳の頃は、毎年夏になると故郷青森へ帰りねぶた祭に参加していたそうです。故郷への愛と情熱が、この鮮烈な赤から強く伝わってきます。
制作年
1968年
素材/技法
木版、彩色
制作場所
日本
所蔵美術館
    棟方志功記念館
ジャンル