ユリウス2世の肖像
Portrait of Julius II
ラファエロ・サンティ
作品解説
ラファエロの代表作、《アテネの学堂》。これを彼に依頼したのは、当時教皇ユリウス2世です。ラファエロは、ローマに居を構えたあと、彼の肖像画を依頼されました。ユリウス2世は、教皇でありながらも、政治家や戦争好きの軍人などと呼ばれていました。その一方で、芸術を愛しており、ラファエロをはじめとした多くの芸術家のパトロンになっています。また美術品の依頼も多く、ラファエロのみならず、ミケランジェロやブラマンテなどにシスティーナ礼拝堂やヴァティカン宮殿の室内装飾画、サン・ピエトロ大聖堂の新築などを頼んでします。この肖像画には、ユリウス2世の2面性を見ることができます。美術史家のはしりであるジョルジョ・ヴァザーリも、真に迫った絵だと評価しています。この絵のユリウス2世は、白い髭が年老いているように見えますが、引き結んだ口元には力強さがあります。また物思いにふける顔は、彼が経てきた政治の舞台を語っているようです。また彼の左手は、肘掛をがっしりと握っていますが、これは政治的及び軍事的な力強さを表現しています。それに反して、右手はハンカチをしなやかに握っていますが、これは芸術への敬愛を表しているといわれています。彼こそがルネサンス最盛期の画家たちを育て、名作を作るきっかけとなった人物といえるでしょう。
制作年
1511から1512年
素材/技法
板に油彩
制作場所
ローマ